目指す地平は限りなく遠いのかもしれない。だが、今季は何度も 可能性を見せた――。守護神の正統後継者として期待される男の、 優しげな瞳からは窺い知れない激情に触れる。 最高峰の戦いにおいても、その存在感は際立っていた。日本シリーズ第1戦、1-1で迎えた9回裏、落合監督が球審に告げたのは浅尾拓也だった。チームの命綱とも言える右腕は同点の場面を託され、勝ち越した直後の延長10回も続投。岩瀬仁紀にマウンドを譲ったのは2死を奪ってからだった。 セットアッパーとストッパーの序列を超え、守護神とその後継者との差は限りなく縮まっている。それは浅尾が長い戦いの中で積み上げてきた信頼の証といえる。その事実を最も象徴していたのが、球団史上初のリーグ連覇を成し遂げたあの夜のワンシーンだった。 「代わると思いました」 浅尾は、さも当然とばかりに言う。 10月18日、横浜スタジアム。3-3で延長10回に入り、時間はす