大学時代、半年だけ働いていたスナックに、みーちゃんという常連客がいた。 必ず火曜と木曜に来るみーちゃんはタクシーの運転手をしていて、薄い薄い焼酎お湯割りを飲む。 60代で、いつも身綺麗にしている寡黙な人。 座るのは広いボックス席ではなく、入り口すぐ横にある、荷物置き場と化したカウンター席だ。 カラオケも歌わないし、とにかく一切喋らないみーちゃんはあまり人気者とはいえず、隣には大体チーママが座っていた。 入って1ヶ月ほどした頃、初めてみーちゃんの隣に座ることになった私は、質問してもなにも返ってこなかったから仕方なく自分の話をした。 「この店のお好み焼きが好きだ」とか「新しいiPodを買った」とか「大学で花の絵を描いてる」とか他愛もないことだ。 いつも通りみーちゃんは2時間で帰った。 これでよかったのかな…と思っているとママが見かねて「今日みーちゃん楽しそうだったわね」といってくれた。 それか