ぱつぱつに張ったふぐの白子の薄膜が口の中ではじけると、体が打ち震えた。なんなんだこれと…… 口の中にべっとりと旨味が残り、その香り高さは消え去ることがなかった。こんな美味いものがあったのか…… * ふぐといえば下関という噂があるが、数多蠢く噂をかき分けていくと、実は、大分の臼杵という街のふぐが大変素晴らしいのだという情報をつかんだ。臼杵ふぐはなにより美味しく、そして、下関よりも圧倒的に安いらしいのである。 今までふぐの専門店に行ったことがなかった。わが父は肉、魚が嫌いな偏食家だったので、ふぐなんてもってのほかである。僕は、ふぐというのは一体どんな食材で、いかなる料理になるものなのか長らく想像をめぐらしてきた。 我々は、旅行滞在中の別府駅を発ち、上臼杵駅にたどり着いた。上臼杵駅は、松、無人、木造駅舎という、昭和と言ってもかなり初期の昭和を思わせる構えであった。よく分からないけれど、うまいふぐ
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