トップ選手が示した良識を、日本のスポーツ界は重く受け止めなければならない。 スピードスケート女子の五輪金メダリスト、小平奈緒さんが10月の引退会見で「札幌五輪に関しては一旦、(距離を)置いているところです」と述べた。 札幌市が手を挙げている2030年冬季五輪招致で、日本オリンピック委員会(JOC)などから支援を要請されていることを明かした小平さんは、「4回のオリンピックを経験して、成長させてもらった。それを利用されたくない」とも語った。 東京五輪・パラリンピックを巡る贈収賄事件を、念頭に置いた発言だろう。 札幌招致は本来、地方都市の未来像を描く希望に満ちた話だ。世論を味方にするどころか強い向かい風を招いているのは、当事者意識を欠いたまま招致を進めるJOCの姿勢である。 山下泰裕JOC会長は東京大会の組織委員会で副会長を務めた。それにもかかわらず、逮捕、起訴された元組織委理事らの専横を看過し