著: たけしげみゆき 27歳の冬、私は縁もゆかりも思い入れもない大阪市此花区にある「千鳥橋」という駅のそばで、人生初めての一人暮らしをスタートした。 一般的に「初めての一人暮らし」という言葉からは、新生活への期待と少しの不安が入り混じった甘酸っぱい気持ちが連想されるだろう。だが私の一人暮らしは、そういったトキメキとは無縁のところから始まった。 私は21歳のころ、当時のパートナーと共に「シカク」というインディーズの本や雑貨を売るお店をオープンした。 はじめは小規模だったお店の商品がだんだん増え、手狭になったのでもっと広い場所に移転したいと考え始めたのが27歳のころ。そして条件に見合う物件がたまたま千鳥橋駅のそばだったので、ほとんど訪れたこともなく、当然思い入れもなかったその町にお店と一緒に引越すことにした。 しかし、お店の移転が完了して「さあこれから」という時に、パートナーと電撃離婚し、経営