マーベル・スタジオの新たなヒーロー映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』が、とくにアメリカで、当初の予想を超えるヒットを記録している。マーベル・コミックのカンフー・ヒーロー作品を原作とした本作の特徴は、アジア系に占められたキャスト陣とスタッフ、そして中国文化を中心に置いたストーリーだ。この新しい試みが想像以上の成功を収めた理由は、いったい何だったのだろうか。 近年、作品によって多様性を強調するメッセージを打ち出すことの多くなったアメリカ映画界において、その第一線にあるといえるのが、ディズニーであり、マーベル・スタジオであろう。これらの作品が目立つのは、莫大な製作費をかけた娯楽大作のなかで、そういったメッセージを色濃く発信しているという点だ。アフリカ系のキャストで固められた、これまでに類を見なかった超大作『ブラックパンサー』(2018年)が大きな成功を収めたように、常識を打ち破る試みが、