レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』は史上最高の絵画と名高い。ところが、1911年の盗難事件で注目されるまでは、無名の作品にすぎなかった。行動学者のジョン・レヴィ氏の著書『影響力の科学 ビジネスで成功し人生を豊かにする最上のスキル』(小山竜央監修、島藤真澄訳、KADOKAWA)より、一部を紹介しよう――。 その絵画は、誰にも気づかれずに盗まれていた 1911年8月21日月曜日、午前6時55分、白い作業スモックを着た男が、フランス、パリのルーヴル美術館に入った。毎週月曜日、ルーヴル美術館は清掃、メンテナンス、搬出入のために一般公開されず、そのため男は気づかれずに行動できた。おまけにこの時、美術館は、当時世界最大の建物(約18万2000平方メートルの敷地に1000の部屋)の警備要員を、すでに166人から僅わずか12人にまで減らしていた。 男は誰もいないホールを歩きながら、ルネッサンス絵画を