東京都杉並区の住宅地にある「童話屋」は、詩人の工藤直子さんの代表作『のはらうた』や、一大ブームになった『葉っぱのフレディ』など、二百冊におよぶ詩集や絵本を世に送り出した小さな出版社。創業者の田中和雄さん(86)は、今も現役の編集者として活躍している。本の世界に精通した大先輩に、その奥深さを教えてもらおう−。そんな思いで、同社にほど近い自宅におじゃました。 数年前、筆者が愛読している童話屋の『ポケット詩集』をコラムで取り上げたら、見ず知らずの田中さんから礼状が届いた。手書きの丁寧な文面から「他者との縁を大切にする人だな」と感銘を受け、いつかお会いしたいと思っていた。