処理水の海洋放出が始まった東京電力福島第1原発=24日午後1時20分漢字は不思議である。例えば「静」や「浄」の字には、「争」が隠れている。なぜか。詩人の吉野弘さんが『争う』という詩で考察を加えている。<青空を仰いでごらん。青が争っている。あのひしめきが静かさというもの> ▼<流れる水はいつも自分と争っている。それが浄化のダイナミックス>とも。空の静けさも清らかな流れも、争いの中から生まれるのではないか、と。詩人の問いかけが重く響く夏である。東京電力福島第1原発で、処理水の海洋放出が始まった ▼東日本大震災の発生から13年目、ようやくというべきだろう。処理水は、設備による浄化で取り除けぬトリチウムを含んではいる。その放射線は弱く、海水で薄めた上での放出は国際機関から安全性のお墨付きを得てもいる。「核汚染水」との中国の批判は悪質と言うほかない