今、東横インと並んでもっとも有頂天とは無縁のホテルの物語『ホテル・ルワンダ』を見る。感想はといえば「支配人の勇気に感動した」「こんなアフリカの悲劇を知らなかった俺って一体……」「主人公の名前がポール・ルセサバギナ。ポールにバギナって両性具有か」といたって凡庸なものばかり。そんなことを綴っても詮無いので、有益な情報をひとつ。 私の本棚にある松本仁一『アフリカで寝る』(朝日新聞社・96年刊)。この中の「ルームキーがない」を読み返してみると、偶然にもミル・コリンホテルのその後の光景を描写しているのだった。 反政府軍が制圧したルワンダを訪れた作者は、首都に2軒しかない本格的ホテルのひとつ、ミルコリンズ・ホテルへと向かう。つまり戦後も営業を続けていたわけだ。部屋の状況は「すみには本来の住人の荷物が積み上げられ、テーブルには食べかけのオレンジ、ベッドには新聞が広げられている」レベルで、支配人の話によれ