きのう、なぜかドストエフスキーの話になった。 糸井重里さん、加藤貞顕さんと一緒にお昼ごはんを食べ、店を移動してだらだらとコーヒーを飲んだそのひとときに、なぜかドストエフスキーの話になった。「なぜか」というのはちょっと嘘で、理由ははっきりしている。ぼくがドストエフスキーTシャツを着ていたからだ。話はドストエフスキーが苦しまぎれに採用した、口述筆記に移った。 ドストエフスキーの著作のうち、少なくとも2冊は確実に口述筆記で書かれたとされているものがある。『罪と罰』の後半部分と、『賭博者』だ。 とくに『賭博者』は、ルーレット賭博ですっからかんになったドストエフスキーが出版社から多額の原稿料を前借りする際、締切を破ったら過去作の著作権を5年だったか7年だったか出版社側へ譲渡する、というむちゃくちゃな契約を結び、しかも締切まで残り1か月を切っているのに一文字も書いていない、というおよそ他人事とは思えな
