実はちょっとした機会があって『砂の器』を10年ぶりに再読した。 『砂の器』は世間的に松本清張の代表作と言われているが、ぼくはヘンテコリンな小説だと思っていて、よくぞここまでのものにしたなと逆に映画版の評価がグンと上がったくらいだった。 今回読み返しても「ぶっちぎりでおもしろいけどやっぱり変な小説だ」という思いはかわらず、より強固なものとして心に残った。 となると、映画のほうも見返したくなるわけだが、奇跡的なタイミングで午前十時の映画祭の大トリを飾るのが『砂の器』だと教えてもらい、どうせだったらとTジョイに足を運んだ。 過剰に泣かせる要素はあるものの、すごく重層的で語るべきポイントが多い名作であることに変わりはなく、単純に映画版の方が優れているなと以前と同じように感じた。むしろ読後感のそれよりも感動の度合いは大きかったのはスクリーンで観たせいもあったのかもしれない。 しかも今回改めて映画を観