角川ソフィア文庫『民主主義』の解説を書いた。とてもよい本だったので、できるだけ多くの人に手に取って欲しいと思う。 戦後、憲法が施行されて間もなく文部省が「民主主義の教科書」を編んだことがあった。1948年に出て、53年まで中学高校で用いられた。それがたいへんにすぐれたものであったという話は以前から時おり耳にしていた。とはいえ、今の文科省の実情を知っている者としては「昔は今とはずいぶん違って開明的な組織だったのだな」という冷笑的な感想以上のものを抱くことができなかった。 その本が復刻されるので解説を書いて欲しいという依頼を受けた。ネットの書誌情報を見ると、これまでに復刻版が1995年に径書房から、短縮版が2016年に幻冬舎から出されている。いずれもまだ流通中であり、そこにさらに復刻版を出すことは「屋上屋を重ねる」ことになりはしないかと心配したが、それは私の与り知らないことである。良書が複数の