「蛍の光」が流れていた。防衛省正面の階段を一歩一歩下りながら、音楽隊の演奏を耳にした稲田朋美氏は、目元をハンカチでぬぐった。3日前、「監督責任」をとって防衛相を辞任したばかり。稲田氏にとって、31日の「離任式」が、最後の登庁日となった。 1年前の8月、稲田氏は安倍晋三首相肝いりで、防衛相に起用された。かねて稲田氏を取材してきた私も、防衛省担当として、東京・市谷本村町の同省を取材拠点にすることになった。 稲田氏にとって、防衛分野は「専門外」。自民党の政務調査会長を経験したとはいえ、お世辞にもこの分野の政策通とは言えなかった。首相から役職を告げられた際、思わず「自信がない」と口走ったという。それだけに、受け入れる側の防衛省・自衛隊側は2通りの反応を見せた。 制服組(自衛官)を包んだのは、高揚感だった。首相が「将来のリーダー候補」と目をかけ、トントン拍子に出世してきた稲田氏。自衛隊幹部はこう言っ