かねてから、私が個人的に提唱している映画ジャンルに「親切映画」がある。登場人物が誰かに親切にしたり、誰かから親切にされたりする物語。恋愛映画のように情熱的な関係やロマンティックな台詞はないけれど、純粋な善意から人を助けたり、手を差し伸べたりする親切映画は、観ているだけで嬉しくなってくる映画ジャンルだ(そんなジャンルがあればの話だが)。 親切は愛よりもずっと簡単で、思い立ったらすぐにできる気軽なコミュニケーションの方法である。ああ、人の親切心が描かれた映画が観たい。沖田修一監督の最新作『さかなのこ』は、そんな私の期待に応えてくれる、最高の親切映画であった。 小学2年生のミー坊(西村瑞季)は、魚が大好きな男の子。彼は日々、手作りの「ミー坊新聞」で魚の魅力を発信しつつ、水族館や海に出かけては魚に親しんでいた。学校の勉強は苦手だが、母(井川遥)は「いつかお魚博士になりたい」と夢見るミー坊を肯定し、