日本史上最悪の原発事故発生以来、東京電力の株価は90%以上下落している。東電株は、経験豊富な外国人投資家が今もっとも手を出したがらない銘柄だろう。しかし、これは国内の一部投資家には必ずしもあてはまらないようだ。特に高齢の投資家には。 一例を挙げよう。松本百代さん(63)は、3月11日の東日本大震災発生直後に東電株の売却を息子から懇願された。しかし、この時、「なにがあっても、東電株は売るな」という亡き義父の言葉が心をよぎり、保有株2000株を手放すことが出来なかったという。 「父親の遺言みたいなものに私も主人も逆らえなかった」と、松本さんは言う。 松本さんは3月末時点で74万1000人以上いた東電株を保有する個人投資家の1人にすぎない。株主の多くは安定した高い配当に期待して東電株を購入していた。日本では株式投資はもっとも人気の投資方法とは言えないが、東電株は次世代にも引き継ぐことができる数少