「虫歯になったら削って埋めて」というのが、これまでの一般的な歯科医療のイメージだ。しかし、予防重視に転換する取り組みが専門家の間で進んでいる。専用の「トレー」を使って口の中にも薬が使えるようにするなどの方法で、夏には大学で歯科医向けの研修も始まる。関係者は「この技術は東日本大震災のような災害時、避難生活での口の健康にも貢献しうる」とアピールする。(草下健夫) ◇歯を傷つける前に 「今までの歯科医療の中心は、病気になった歯への発症後の対応だった。発症前に、侵襲性の低い(できる限り歯を傷つけない)治療をするのが望ましい」 鶴見大学(横浜市鶴見区)歯学部探索歯学講座の花田信弘教授は、予防の重要性を強調する。口の中では、「ミュータンスレンサ球菌(虫歯菌)」と食べ物の糖を基に酸性の「バイオフィルム」と呼ばれる膜ができて歯を覆い、歯からカルシウムやリン酸が溶け出す。