表現を「見る・聴く・読む・触れる」とき、オーディエンスは作家の環境や性格や物語をどうしても仮構してしまう。それと鏡あわせのように、作家は鑑賞者が仮構したイメージを、自己のイメージに取り込んで再仮構してしまう。自らの名を掲げて不特定多数に表現を届ける主体となった者は、仮構された二つの「自らの姿」の重ね合わせを、多かれ少なかれ強いられる。そうした重ね合わせへの強烈な執着を示してきた作家として知られるのが、ご存じMr.Childrenである。 彼らにとって21枚目にあたる新作アルバム『miss you』で、なにかが変わった。歌詞が暗い? 当然それも大きい。しかし、それだけではない。音の鳴りが違う。1曲目の「I MISS YOU」冒頭、右側から聴こえるアコースティックギターのアルペジオと、左側から聴こえるピアノの伸びからしてすでに違う。演奏の響きが、秘密めいた親密さを伴っている。決定的なのは、桜井
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