素晴らしい本だ。それ以上に研究とは、啓蒙の在り方とは、そしてそもそも人間とはなんだとろうか、という思いを何度も本書の通読中に思った。語り口はやわらかくまた優しいが、時に熱情的なメッセージが冷静に刻み込まれている。同時代の“全体像”を出会い喫茶、出会い系という風俗を通して描いた著作だ。多くの人が長くこの著作を読み、私たちがいま生きている2010年代の肖像として今後利用していくだろう。それほどの著作だ。経済思想史的にいえば、これはまさに現代の『貧乏物語』なのだ。河上肇のこのベストセラーが、当時の日本の現実で「貧乏」を描くことなく同時代のイギリスの状況を描いたことに対して、本書は現在の日本の「貧乏」ではなく、ありのままの現在の日本の「貧困」を描写しようとしている。そしてその試みは私の思うところ、きわめて深いレベルで成功している。 本書の出会い喫茶調査(時間的にも地域的にもかなりのサンプル収集と本
アベノミクス(安倍首相の物価目標政策などのデフレ脱却政策)は危機に直面している。いや、日本を20年にわたり停滞させているデフレ脱却はその実現の危機に早くも直面しているといったほうがいい。 たかだか0.1%程度の長期利子率上昇で国債リスクを喧伝したり、人口減少デフレを喧伝したりするのは、まだ悪い冗談のレベルだ。だが、日本銀行総裁人事を、いま話題になっている武藤敏郎氏などの財務省的な人事や、または保守的な人選で行えば、アベノミクスは急速にその成果を喪失し、民主党政権とかわらない。一年後には消費税増税だけが残り、そしてデフレ不況は継続して、国民の大きな失望の危機に直面するだろう。 端的に言おう。財務省、日本銀行は自分たちの周囲しか視野はない。またその行動動機は「自社」の利害のみである。最近の武藤氏らの積極的な緩和許容発言には誤魔化されてはいけない。おそらく当面だけ緩和のような姿勢をみせながら、消
新年明けましておめでとうございます。 表題の件についてシャシ・タルールが書いたProject SyndicateをMostly Economicsが紹介している。その設問(What is the single most important thing that can be done to improve the world?)への答えは次の2語で表わされるという:「educate girls」。即ち、女性を教育すること、とのことである。 これについてタルールは以下のように説明している。 It really is that simple. No action has been proven to do more for the human race than the education of female children. Scholarly studies and research p
さて、金子さんは http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-249.html(問われるべきは企業別組合強化よりも労働戦線統一) 今回の濱口先生の「労使関係の「近代化」の二重性」で主要な論点は出尽くしたといってもいいと思います。 といいながら、新しい論点を次々に繰り出しています。 もっともマクロ的で全ての根源にある論点としては、 ヨーロッパの近代というけれども、結果的には組織という面からいえば、日本のシステムの方がよほど近代的だった。言ってみれば、日本は企業(株式会社)という近代的仕組みの中に封建的慣習を残してきたけれども、ヨーロッパはトレードという古い仕組みの中を近代的リニューアルしようとしてきた(私はジョブ型というのは反対でトレードというべきだと思っている)。ここがポイントです。 いやまあ、「近代的」って言葉があまりにも重層的なので、こうい
社会政策・労働問題研究について歴史的なアプローチで研究しています。ここではそのアイディアやご迷惑にならない範囲で身近な方をご紹介したいと考えています。 今回の濱口先生の「労使関係の「近代化」の二重性」で主要な論点は出尽くしたといってもいいと思います。おそらく、我々はここから現代の問題を考えて行かなければならない。 濱口さんとの間で交わされた議論は、労働運動をいくつかの層で考えなければならないことを示唆しています。私はいつも講義でもナショナルセンター、産別、企業別組合、事業所の4層構造を教え、戦前は一番、上と下から組合運動が始まり、徐々に産別が形成され、企業別組合(戦後ですが)が形成されていったことを説明します。組合運動を企業別組合だけで理解してはいけない、と。本当はここに一般組合や地域別組合が入ってくるわけですが、とりあえず、企業別組合が複層的な構造の中にあることから理解してもらわなければ
大晦日と元旦に買ったもの のめりこませる技術 ─誰が物語を操るのか 作者: フランク・ローズ,島内哲朗出版社/メーカー: フィルムアート社発売日: 2012/12/25メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 226回この商品を含むブログ (15件) を見る 大塚「物語消費論」に対応する、と言っていいか。『LOST』ってこんな風になってたのね。月とゲットー:科学技術と公共政策 作者: リチャード R.ネルソン,後藤晃出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会発売日: 2012/12/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る ずいぶん古い――30年前のレクチャーである。不平等について―― 経済学と統計が語る26の話 作者: ブランコ・ミラノヴィッチ,村上彩出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2012/11/23メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (
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