安倍晋三首相が3月半ばに環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を決断し、状況が急展開している。TPPは地域貿易協定(RTA=キーワード参照)の一種だが、自由貿易協定(FTA)のようなモノやサービスの貿易自由化にとどまらず、知的財産保護などの共通ルールを求める「高度」な協定で、経済連携協定(EPA)とも呼ばれる。TPPをはじめ、RTAが世界で急増しているのはなぜだろう。そして日本の国益や世界全体の利益になるのだろうか。近年の経済学研究を手掛かりに考えてみたい。 ◆◆◆ TPPと並行し、先月末には日中韓FTAの第1回交渉が行われ、今月末には日豪のEPA交渉が最終合意・妥結する見通しだ。日中韓印豪ニュージーランドの6力国が東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国とともに5つのFTAを束ねる東アジア地域包括的経済連携の交渉も立ち上がった。こうした動きは世界規模で進展している(図)。 他方、世界貿易