このタイトルを見て「えっ、ゲバルトの復活?」と思った方もいるかもね。その推測は半分はまちがっているけど、半分は当たっている。松尾匡『左翼の逆襲』の副題は「社会破壊に屈しないための経済学」。ゲバルトはともかく私たちはかつての労働者の精神を取り戻すべきだ、というのが本書の主張だ。 そもそも90年代以降、私たちは「日本経済は国際競争力を失っている」「産業構造の転換が必要だ」「このままでは財政が破綻する」といった言説に乗せられて、緊縮財政を支持し、生産性の低い企業が淘汰されても仕方がないと考え、消費増税を許してきた。「改革」を掲げる自民党もリベラル・中道左派とされる野党も同じだった。 その結果どうなったかといえば、格差と貧困が広がり、産業は空洞化し、中小企業や個人商店は苦境に立たされ、1%の富裕層だけが潤う社会になってしまった。こうした新自由主義路線はコロナショックで加速するだろうというのである。