理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ 吉川 浩満 朝日出版社 2014-10-25 売り上げランキング : 1300 Amazonで詳しく見る by G-Tools 読んでためになるだけでなく、何というか、心が洗われるような本だった。 本書のはじめの方で明かされるモチーフは、専門的な科学としての進化論の基本的な考え方を過不足く解説しつつ、それと大衆的な進化論のイメージあるいは「世界像」としての進化論との懸隔を明らかにしながら、(後者を前者に近づけようという科学的啓蒙とは別の関心から)その「懸隔」そのものの私たちにとっての意味を問う、といったところ。ここではひとまず専門家と素人との懸隔が問題であるように見える。しかし叙述が進むにつれて、それはドーキンスとグールドとの懸隔であり、また実はグールドの内部にあってその人自身を苦しめたはずの葛藤であり……と変奏され、さらにはそれが科学理論と世界像、自然