紙でありながら堅牢さや加工性に優れ、環境・天災・安全などの分野に展開される。社会性を意識して開発する姿勢に、世界のデザイナーや企業が注目、市場を広げる。現場には伝統技術を守る執念と、新規市場を開拓する信念があった。 「明日の朝までに、ある分だけ成田に送ってほしい」 安達紙器工業(新潟県長岡市)に中国の企業から電話が入ったのは2008年5月13日のこと。7万人近い人命が奪われた中国・四川大地震が発生した翌日だった。送ってほしいと頼まれたのは、安達紙器が独自開発した「レスキューボード」。特殊紙で作られた折りたたみ式の担架だ。 重量は通常の担架の半分程度の3.5kgと軽量で、折りたためば縦60cm、横73cmで厚さはたったの5cmとコンパクトだ。組み立てなど必要なく、広げればすぐに患者を乗せることができ、取っ手を持てばそのまま搬送できる。 ニューヨーク近代美術館で展示も 原料は紙とはいえ、特殊な