> > > 「存在しない」サバイバーたち ― セックス・労働・暴力のボーダーで(1) 大野更紗2011年08月22日08時31分提供: (*本稿では、現在「差別用語」とされている表現を、当時の記録の記述に即して、そのまま使用しています) 8月、日傘越しでも皮膚に刺さるような紫外線がふりそそぐ猛暑の某日。インターフォンのボタンを押す緊張感に、思わず手が震えた。インビジブルな不可侵の地、「婦人保護施設」を前にして、躊躇を感じぬ人などいないだろう。 この門の内側に、一般の人が許可なく踏み入ることはできない。外見からは何の建物かもわからず、入口は重い鉄製の格子で厳重に閉ざされている。所在地や連絡先は、基本的に一切非公開である。とめどない暴力の連鎖から逃れ、最後の砦に辿り着いた女性たちにとって死活問題となるからだ。 ■「戦後」の売春防止法と婦人保護施設 このM寮の施設長であるYさんは、ガチガチに