たった二間の小さな離れ屋。 庭に面したL字型の廊下が、ダイちゃんの居場所だ。 戸が開いていても部屋の中には入らない。 私が朝ごはんを用意するのを、敷居の向こうでじっと待っている。 「懐いてきたら、そのうち恋人を連れてくるよ」 と、友人が言った。 全身に草の実をくっつけて、鼻の横は涙で黒ずんで。 こんな小汚いオス猫を好きになってくれる、奇特な女のコがいるだろうか。 それに、この辺りで見かけるのはオスばかりだ。 「子どもが生まれたら、見せに来るかも」 恋人はともかく、せめて他の人間に嫌われないよう毎日ブラシをかけて顔を拭いた。 努力の甲斐あって、少しずつダイちゃんは小ぎれいになり、 毛づやが良くなっていった。 そうして、友人の予言は現実となった。 ☆☆☆ 五月の半ば。ダイちゃんが痩せた。 きちんとごはんをあげているのに。 ダイちゃんは、カリカリのトッピングに入っている煮干しが苦手だ。 細かく砕