世界中で進む、通貨安の原因、そして対処法はどこにあるのか。“囚人のジレンマ”の状態にある通貨安競争に対する、協調の重要性を筆者は説く。 一橋大学大学院商学研究科教授 小川英治=文 平良 徹=図版作成 リーマン・ショック後10% 過大評価された円 筆者は、先日、韓国ソウルに出かけて、日韓新時代共同研究プロジェクトのメンバーの一人としてその最終会合に出席した。日韓新時代共同研究プロジェクトは、麻生太郎元首相と李明博大統領のイニシアチブによって進められてきた日韓の研究者による共同研究である。歴史を含む日韓関係、国際政治、国際経済の3分野においてそれぞれ7項目、計21項目の政策提言を含む報告書が日韓政府に提出された。その報告書では、「共生のための複合ネットワーク構築」をめざしている。とりわけ、国際経済においては、現在、交渉がストップしている日韓自由貿易協定(FTA)、あるいは経済連携協定(EPA