みんな無我夢中だったように思う。 いまのような厳しい時代に大人の仲間入りをした人たちに、何を伝えられるだろうか。考えるうち、自身が20歳のころを思い浮かべた。 もう20年前になる。バブル景気が崩壊し、地価や株価が暴落した。政治も経済も混乱していた。就職するころには、阪神大震災や地下鉄サリン事件があり、社会は不安に覆われていた。大手金融機関を含む企業の倒産が相次いだ。 世の中のことが分かり始める年齢だったけれど、仲間は世情にあまり左右されることなく、懸命に目標に向かっていた。 <互いの背中を励みに> 東京の国立大法学部で好成績を修めた友人は、助手として大学に残り、20代半ばで九州の大学の助教授になった。女友達は「医師になる」との初志を貫いて浪人。翌年に医学部へ進み、いまも医師として母親として活躍している。「頭取になる」と宣言して銀行に就職した仲間もいた。 プロレスラーになるのを夢