碩学の本は、とてつもなく重い。来月、出版予定の歴史をテーマにした拙著の最終校正をしていたが、この本を読んで、一瞬、出版を取り止めようかと思ったほどである。歴史を書くということは、生半可な営為ではないのだ。そのことを、改めて痛いほど思い知らされた。 およそ何事であれ、物事を論じる時には、まず、言葉の定義を明確にしなければならない。ルカーチはオックスフォード英語辞典(OED)を頻繁に引く。最初に、「『正式な記録』という意味での歴史(history)が初めて登場したのは、1482年」であったことが示される。ロレンツォ・イル・マニフィーコの時代だ。そして、「発言の意味は、『いつ』それが言われたのか、『いつ』その人が生きていたのかを知らない限り、理解することはできない」のだ。このような冷徹な認識のもとに、肺腑を一直線に貫くルカーチの透徹した箴言が、次々と繰り出される。 「多くの国では現在でも、学校の