『奴隷のしつけ方』と衝撃的なタイトルだ。著者はマルクス・シドニウス・ファルクスというようだ。古典なのだろうか。本書を手に取り、パラパラとページをめくると違和感を覚える。マルクス・シドニウス・ファルクスとは何者なのか。記憶の糸を手繰る。しかし、思い出せない。本書の帯には「何代にもわたって奴隷を使い続けてきたローマ貴族の家に生まれる。」とある。書店でスマートフォンを取りだし、検索してみる。ウィキペディアでも見つからない。謎は深まる。 答えを求めてページをめくる。翻訳者のあとがきを読んだとき、謎が解けた。 本当の著者はジェリー・トナーという男だ。解説者として表紙に名前がある。ケンブリッジ大学の古典学研究者のようだ。そう、著者とされるマルクス・シドニウス・ファルクスとは架空の人物だ。本書は古代ローマ帝国時代の奴隷という存在がどのようなものであったかを、架空の人物に語らせ、各章の末尾に本物の著者トナ