「歴史」が蒸発し始めている。 いきなりこんなことを言い出しても大方の読者にはピンとこないだろうが、しかし、曲がりなりにも「歴史」に関わる領域に足つけて仕事をせざるを得ない身にしてみれば、この危機感というか焦燥感は最近ますます切実なものになってきている。 たとえば、「歴史」と名のついた雑誌の売れ行きがここ十年の間でゆっくりと、しかし確実に下降線をたどっている。新たに創刊される雑誌でも、「歴史」と名がつけば取り次ぎがいい顔をしないと聞く。地方史や郷土史、あるいはそれらと重なってきたはずの民衆史や民俗学といった領域も含めて、「歴史」が良くも悪くも一般的な読書人の一般教養として想定されていた時代からすでに遠く、また、それらを支えるべき地方の研究会や学会といった組織自体、新たな会員を引き込めなくなりどこも高齢化が著しい。 それは、少し焦点を広げて考えれば、いわゆる総合雑誌の読者層が高齢化してゆき、新