警察の事情聴取は想像以上に過酷なものだった。医療事故報告書など提出された公式資料には竹田くんのウソを証明できるものは無かった。すでに古荒医師が暴行事件の犯人であるという筋書きが出来がっていた。 「どうしてこうなったのか?」自問自答する古荒先生。 思えば、竹田くんほどの勇気の持ち主はいない(善悪は置いておいて)。周囲が全員敵でも立ち向かえるだけの勇気・闘志が彼にはある。 彼のような人間に立ち向かうには何よりも勇気が必要だった。彼が作る流れに対抗できるだけの勇気。たった一人でも戦える勇気。 組織人として周囲に流されるままに生きてきた古荒先生にはその勇気がなかった。 古荒先生は、10時間以上の聴取に耐えた。彼の中で何かが覚醒した。「これからはどんな時も患者を第一に考えよう。周囲からどんな圧力を加えられようとも。」そう決意する。 凄まじい精神的疲労を背負いながら冷え切った身体を引きずるように、赤池