昭和30~40年代初期の工場の様子。餅つき自体は機械で行っていたが、その他の工程はほとんど工員の手作業で行われていた。 いつからだろう。臼と杵で餅をつくという光景を見掛けなくなったのは。今やお正月でも、とんと目にする機会がなくなってしまった。昔はご近所さんのどこかで、必ず餅をついている家があったはずなのに。 ひと昔前まで、私たちはこう思っていたはずだ。「餅は正月にしか食べられないもの」と。 餅つきの光景を見かけなくなった代わりに、私たちは季節を問わずいつでも食べられる餅を手に入れた。一切れずつきれいに包装された、加工食品としての餅を。 その代表的存在が、「サトウの切り餅」。新潟に本社を構えるサトウ食品が世に送り出したこの餅は、包装餅の歴史を塗り替えるエポックメイキングな製品だった。 サトウ食品のルーツにあたる佐藤勘作商店が、初めて正月用のし餅の製造を始めたのは1958(昭和33)年。のし餅