富士見ファンタジア新人賞20年の歴史の中で、5回目の大賞に選ばれた作品。小説として"出来がよい"だけでなく、秘められたベクトル*1の在り方が刺激的でした。以下、特徴的に感じたところを二点ほど。 曖昧な世界の境界 死者が起き上がって再び活動をはじめるようになった、『生ける屍の死』を彷彿とさせるような世界設定。ファンタジーのテンプレから逸脱した特殊な環境が背後に控えているはずなのですが、主人公が幼い女の子であるため、読者にもそのへんの詳しい状況がよく分かりません。 そのため、前提条件の分からないもやっと感がずっとついて回ります。曖昧で茫洋とした世界を、おっかなびっくり歩いていく感覚。*2ただし、この感覚は主人公と共有されたものでもあるので、その心許ない浮遊感をこそ描いている作品と見るのが妥当でしょう。 支離滅裂な言動、一貫した思考 キャラクターの思考が一貫している*3というのが、いちばん特筆し
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