金曜の夜。 恥ずかしながら婚約破棄をされた。仕事も上手くいかない時期だったこともあり、正直人生を終わりにしようかと思った。 帰り道、家に帰りたくなくて朝まで川沿いをひたすら歩いて足が動かなくなるまで歩いた。家に帰れば、昨日までの思い出が全て無くなってしまう現実感に耐えられないと思ったからだ。まるで帰る場所までも奪われたような感覚だった。 生まれた場所や育ちの影響もあってどこかに遊びに行くことが恐らく人よりもずっと少ない人生だった。毛嫌いしていたディズニーランドも三十路手前のこのいい歳になってから初めて楽しいことを知った。月並みだけど、この楽しさはずっと続くものだと思いこんでいた。少なくとも金曜の夜、急になくなったりはしないと。 なぜこんな全てを奪うようなひどいことをするのだろうと思った。だけど、突き詰めればやっぱりそれば自己中心的な考えで、全ての責任というか、このことを招いた原因は自分にあ
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