この噂《うわさ》が世間から伝わってきた時、 式部卿《しきぶきょう》の宮の朝顔の姫君は、 自分だけは源氏の甘いささやきに酔って、 やがては苦い悔いの中に 自己を見いだす愚を学ぶまいと心に思うところがあって、 源氏の手紙に時には短い返事を書くことも以前はあったが、 それももう多くの場合書かぬことになった。 そうといっても露骨に反感を見せたり、 軽蔑的な態度をとったりすることのないのを 源氏はうれしく思った。 こんな人であるから長い年月の間忘れることもなく 恋しいのであると思っていた。 左大臣家にいる葵《あおい》夫人は こんなふうに源氏の心が幾つにも分かれているのを憎みながらも、 たいしてほかの恋愛を隠そうともしない人には、 恨みを言っても言いがいがないと思っていた。 夫人は妊娠していて気分が悪く心細い気になっていた。 源氏はわが子の母になろうとする葵夫人に また新しい愛を感じ始めた。 そしてこ
![妻と夫 近いが故のすれ違い【源氏物語130 第九帖 葵 3】朝顔の姫君は 源氏と恋仲にはならず、よい距離感をとる。葵の上は妊娠中で心細い。源氏は葵を愛おしく思う。 - 源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/611cc9b577c16adc9c2737dedd1c91fd070c358c/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fs%2Fsyounagon%2F20230324%2F20230324173154.png)