その日、ぼくは、詩を書いていた。 それが、ぼくの日常である。依頼された原稿があって、〆切りは近かった。 ぼくは、詩の選もするが、同時に詩を書くプレイヤーである。 すこし、題材に悩んでいた。 むかし、父から話を聞いたことがある。兵役を逃れるために、醤油を腹一杯飲むのだと。 80年前の日本が時代背景である。 もちろん、父はそのようなことをしなかったし、兵役にも就いている。 しかし、詩のアイデアとしては、なんとしてでも兵役を逃れようとする男の話は、悪くはないと思った。死を畏怖し「非国民!」となじられても、生きることを優先するのだ。南方の島々で散華した友人たちが、毎晩のように、枕元に立って、何か言いたげであっても。 兵役逃れの理由は「醤油のがぶ飲み」ではなく「階段から転落して足に複雑骨折を負った」ところまで設定して、休憩した。 不意にテレビをつけると、ロシアの兵役動員を30万人増やすという。その現