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ブックマーク / tthatener.hatenablog.com (46)

  • 僕のお父さんはウルトラマン - スウィーテスト多忙な日々

    僕のお父さんはウルトラマンです。 いつからだったかは忘れたけど、途中でウルトラマンになりました。 僕がうんと小さい頃は、お父さんは毎日仕事で忙しそうでした。 だけどいつからだったか、お父さんは仕事に行かずに遅くまで寝ているようになりました。 休みの日に僕がテレビでウルトラマンを見ていると、お父さんが起きてきたので、「お仕事には行かなくていいの」と聞きました。 するとお父さんはテレビをじっと見て、「いいんだよ、お父さんはウルトラマンだから」と言ったのです。 初めは僕も信じませんでしたが、たくさん質問をすると、お父さんはいろいろと教えてくれました。それでやっと当だとわかりました。 怪獣が現れるとお父さんに電話が来るらしくて、お父さんはウルトラマンに変身して飛んで行って、怪獣を倒して戻ってくるそうです。 その話をしているうちに電話が鳴って、じゃあな、と言ってお父さんは出かけて行きました。 怪獣

    僕のお父さんはウルトラマン - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2023/04/01
    怖っ😂
  • なにかが起きているのか - スウィーテスト多忙な日々

    「冷蔵庫の中を見てみろ。そう言っていた?」 警察官であり彼女の学生時代の先輩でもある私は、通報を受けて彼女の家で事情を聞いている。 「えぇ」 「声に心当たりは?」 「ありません」 みゆきは震えている。恐怖のせいかもしれないし、部屋の冷房が十八度に設定されているせいかもしれない。 「それで、言われた通りに冷蔵庫を開けたと」 「はい」 彼女の許可を得て冷蔵庫を開けると、大きな鍋が入っていた。蓋を開けると、中には何やら混濁した液体と、いびつな形の肉片が浮いている。 昨晩みゆきが作った煮物だ。 「何か、おかしなものが入っていたかい?」 鍋の蓋を閉めながら尋ねる。 「いえ、これと言って変わったことは……あ、あれ? きゃっ」 庫内の薄型の引き出しを開けた直後、みゆきは小さく叫んで身を引いた。 ……これは酷い。引き出しの奥には、腐った人参が隠れていた。 「ち、ちょっと待っててください。今片づけます」 そ

    なにかが起きているのか - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2023/02/12
    😆😆😆
  • あいてるよおじさん - スウィーテスト多忙な日々

    小説家である。 誰もが知るような文豪ではないが、一っていける程度の稼ぎはある。 だがしかし、私は今、長いトンネルの中にいる。もう随分と長い期間書けていない。 題材はあるのだ。いや、むしろそれが問題でもある。 「あいてるよおじさん」 この題材が思い浮かんだ時、私は乱舞せんばかりに喜んだ。テーマだけで成功を確信できることなんて、短くない作家人生において一、二度あるかないかの貴重なものだった。 物語を作るにあたって、アプローチの方法はいくつもあるだろう。時系列に沿って作ることもあれば、結末から逆再生して考えることも多い。しかし、「これだ」という物語が出来上がるときというのは、どちらにも該当しなかったりもする。一から十までとはいかないまでも、ほとんどが出来上がった状態で突如として脳内に降りてくるのだ。 そうなれば後は少し色付けをするだけでもいいし、悲劇を喜劇にひっくり返すことだって容易い。

    あいてるよおじさん - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2023/01/18
    どういうことですか?😀
  • 4WD - スウィーテスト多忙な日々

    感動するような話ではない、とだけ先に言っておこう。 あなたの日常の中で、「毎日見かける他人」と言われて思い浮かぶ人物はいるだろうか。 私にとってそれは、老夫婦と一匹の犬だ。帰宅時に見かける二人(と一匹)で、タイミングさえ合えば当に毎日のようにすれ違う。 二人は随分と小さくて、走ることもできなければ重いものを持つことさえ難しそうな、風にも負けてしまいそうな弱々しい雰囲気で、逆に一匹の方は随分と大きくて力も強そうだ。恐らくラブラドールレトリーバーだろう。そんな一団の散歩風景に出くわす。 彼らの存在を認識してから、私は彼らと接触をするようになった。 会釈から始めて、しばらくすると「こんばんは」と言い合えるようになり、さらに日を重ねると、ほんの少しではあるけれど足を止めて一言二言交わす程度にまでなった。「他人」が「ご近所さん」になり、彼らは少しの癒しをくれる存在にもなっている。 私たちは少しずつ

    4WD - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2022/12/27
    最後のオチはどういう意味ですか?😃
  • meet you again - スウィーテスト多忙な日々

    冷蔵庫のあまり開け閉めをしないポケットに、二年近く前に賞味期限の切れたタコライスの素もとが入っている。 タコライスの素とは、タコライスの上にのっているあの味付けされたひき肉がパウチされたレトルト品だ。 ご飯の上にかけてあげればすぐにタコライスが出来上がるし、ご飯の下に敷いてあげてもタコライスが出来上がるだろう。 タコライスの素とご飯が組み合わさってはじめてタコライスが完成されるのであれば、ご飯の方だって「タコライスの素」と言ってもいいのではないか、という議論が町中まちじゅうで交わされている。町中というのは私の住む町のことだから、信じていない人は一度私の町に来るといい。野犬の多い町だ。 つまり、私が言いたいのはそれではない。 冷蔵庫のあまり開け閉めをしないポケットに入れてしまったばっかりに、あまり開け閉めをしないまま、タコライスの素の賞味期限を切らしてしまった。これをどうするべきか、という

    meet you again - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2022/10/25
    😂😂😂冷蔵庫戦争に発展しなくて何よりです。🤣🤣🤣
  • 僕と彼女のはなし - スウィーテスト多忙な日々

    一緒のアパートに住み始めてから、まもなく二年目になる。 どうしても壁を感じることはあるけれど、それでも当然喧嘩などなく、穏やかに過ごしている。 僕は彼女を愛していて、それはいままでも、そしてこれからもきっと変わらないと思う。彼女も同じ気持ちだといい。 彼女は規則正しい生活を送る。彼女が23:30に部屋の電気を消すと、ベランダで吸っているタバコをもみ消して僕も寝床に入る。 寝相が悪いみたいで、彼女が壁に体をぶつける音で起きることもある。大丈夫かい、と優しく呟く。 彼女はアパートから四つ離れた駅近くの大きなビルで働いている。僕はその一つ手前の駅。いわゆるケータイショップだ。彼女と違って僕の方はシフト勤務なのだけれど、少しでも休みを合わせたいので毎週日曜日は休みにしてもらっている。 そのせいで上司に度々小言を言われることもあるけれど、僕にとって大事なのは仕事よりも彼女なのだ。 その日はクレームが

    僕と彼女のはなし - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2022/10/15
    ぶっちゃけ『壁を感じる』のくだりで、オチを予想してしまいました。ごめんちゃい😝
  • きっと君も驚くよ - スウィーテスト多忙な日々

    「あ、あぁあ、あぁ〜」 力無い悲鳴は、獲物を求めて彷徨う蚊の羽音にかき消されるほど弱々しく地面を這うのでした。 肩の調子が良くありません。それは今に始まったことではなくて、思い返せば青年期。高校時代まで遡ることになります。私はバレーボール部に所属していました。 物心ついた頃からひょろ長い私は、その身長を生かそうと思ったわけでもなく、友人に付き合う形でバレーボール部に入部しました。 クラゲに毛が生えた程度の筋肉しか持ち合わせていなかった私は、サーブすらまともに打てませんでした。しかし私も人間の端くれ。身体の使い方や重心移動、遠心力を駆使し、いつしか人並みにプレーができるようになりました。二年三年と続けると、レギュラーメンバーになったりならなかったりして、それなりにまともにプレーを続けました。 惰性で、という程でもありませんが、高校に入学してもバレーボールを続けました。 しかし、高校二年生を終

    きっと君も驚くよ - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2022/04/13
    素晴らしい❣️🤣👏👏👏👏👏
  • 終わりの一幕 - スウィーテスト多忙な日々

    「長女がもう、ダメかもしんないわ」 年始の親戚回りも終わりこたつでくつろいでいると、何気なく、といった雰囲気でみかんの皮を剥きながら母が呟いた。 母の長女というと、戸籍上で言うと私のことである。というかそもそも我が家に娘は私一人しかいない。しかし、今しがた母の言った「長女」が指している人物は、私のことではない。というか、人ですらない。 母の言う長女とは、この家のことである。厳密に言うとこの家の一階部分、「みゆき商店」のことだ。 母は幼い頃から体が弱く、しょっちゅう風邪やら流行り病やまいにかかっていたらしい。 成人してからも結婚してからもそれは変わらず、それが影響しているのか子宝にも恵まれなかった。 子供を作るのを諦めた頃、母は商店を営むことを決めた。それがこのみゆき商店である。 あらかじめ目をつけていたこの二階建ての物件に移り住むと、すぐに日用品や駄菓子を販売する商店を始めた。子を産むこと

    終わりの一幕 - スウィーテスト多忙な日々
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    single-father-ajitama 2022/01/18
    素晴らしい!👏👏👏👏👏
  • 駆け抜ける魔女とあなたの話 - スウィーテスト多忙な日々

    近くに魔女が住んでいた。 家の近くを通る国道で、彼女は時折姿を見せる。 片側三車線の車道を魔法のホウキもといママチャリで爆走しているのだ。 通勤の際、資源ごみを捨てに行く際、日用品の買い出しの際など見かける時間帯はまちまちだが、ママチャリを駆る彼女は顔色一つ変えずにすごいスピード駆け抜けていく。どこへ向かうのだろう。 「魔女」と呼んでいるが、彼女はメイド服を着ている。洗濯で色の抜けたような淡い紫と白の二色の生地で作られたロングスカートのメイド服。髪は腰の上辺りまで伸びたロングで、ヘザーグレーのように白と灰色が混じった色をしている。七十代半ば、といったところか。 メイド服を着てママチャリに跨っているのならただメイドが買い出しに出ているだけじゃないか、と思うかもしれないが、彼女を一目見れば魔女であることを信じてもらえることだろう。魔女としか言いようのない妙な外見と雰囲気なのだ。 ある日のことだ

    駆け抜ける魔女とあなたの話 - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2021/12/29
    素晴らしい👏👏👏👏👏書籍化希望❣️
  • おもい あのこと あのこと - スウィーテスト多忙な日々

    「ほんと、罪な女よね」 鏡の前で、今日も彼女は呟く。うぬぼれた奴だ。 読んでいたから顔を上げて、私は彼女に目をやる。 はあ、とため息をついて、彼女はそれ以降黙り込んだ。 我が家には2.5キロの重りがある。 円形で、真ん中に丸い穴の開いたドーナツ状になっている。筋力トレーニングに使うダンベルだかバーベルだかの重さを調節するために使うものだろう。それ以上は知らないけれど、きっとそういうものだと思う。それが一つだけある。 そしてそれが(私は「彼女」と表現しているのだけれど)喋るのだ。会話をする能力を持っている。 私は物心ついた時から犬やや木々や物の声を聞くことができた、というわけではない。 特別なトレーニングや信仰の結果特別な力を手に入れた、というわけでもない。 そんな特殊能力は持っていないし、そんな非科学的なことは信じていない。信じるつもりもない。 ただ一つ。とある日を境に彼女の声が聞こえ

    おもい あのこと あのこと - スウィーテスト多忙な日々
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    single-father-ajitama 2021/12/14
    ( ´ºωº` )ポカーン
  • さるたち しりとり それきり - スウィーテスト多忙な日々

    兄が二人いる。 長男は一つ年上。いわゆる年子としごの兄。 次男は数時間上。いわゆる双子の兄。 私たちは表面も内面も仲の良い三兄弟だった。 どこでもそうだと思うが、兄弟というのは喧嘩をする。 男兄弟なら当然で、歳の近い三兄弟となるとなおさらだ。 例に漏れず私たちは喧嘩に明け暮れた。仲が良いから一緒に遊び、仲が良いがしょっちゅう喧嘩をした。一戦一戦が必死で決死の大勝負だった。今となっては可愛いものだと思うが、仲裁役をせざるを得ない母はたまったものじゃなかっただろう。 当時のことを思い出す度、人類の進化の記録が遺伝子に刻まれているんじゃないか、と思う。サルが原始人になり、人類の歴史を歩んできたように、私たちも身体一つの原始的な争いから武器を使った争いを経て、わずか数年で言語を使った争いをするまでになった。そしてある時、ついに私たちは争いをやめた。 賢明になったわけではない。疲れていた。体をぶつけ

    さるたち しりとり それきり - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2021/12/08
    めちゃめちゃ面白い🤣🤣🤣
  • PIECE達よ - スウィーテスト多忙な日々

    今週のお題「赤いもの」 私はピスタチオが好きだ。 鼻に触れる独特な青い香りと、とろけるような感、甘さ。薄皮の渋み。 好きになったきっかけは祖母で、その英才教育は私が小さな頃から始まっていた。 そもそものピスタチオ好きは、祖母だった。 私はいわゆるおばあちゃん子で、学校終わりや休日の暇な日には近所に住む祖母の家によく遊びに行っていた。 庭いじりを手伝ったり、料理を手伝ったり、あるいは何もしなかったり。 必要以上に関与しないし強制しない祖母が私は好きだった。祖母に溺愛された記憶はないけれど、もしかするとそういう形の溺愛だったのかもしれないな、と今になって思う。 祖母は居間でよくピスタチオを剥いていた。 よくべていた、ではなく、よく剥いていた。 テレビを見ながらパキパキと殻を剥き、実と殻を左右に分ける。私は隣に座り、テレビを見ながらピスタチオを口に運ぶ。 随分と私に利のある共同作業だったけれ

    PIECE達よ - スウィーテスト多忙な日々
  • のいぶいいもれそ。みるぐいぬかういとうょぎんに - スウィーテスト多忙な日々

    人形が動いた、って話、怪談好きじゃなくても一度は聞いたことがあるでしょう」 玉木さんはグラスの水滴を指でいじりながら言った。 「子供騙し。ええ、陳腐な話ね」 玉木さんに招かれ、私は彼女の家を訪れていた。 彼女の作った夕をご馳走になり、私の持ってきたお土産をデザートでべ、仕事の話と人生の話をだらだらと吐き出し合う。 夜は更け、ふと時計を見ると深夜一時半を少し過ぎている。家が近いからいつでも帰れると、ついつい長居してしまった。そんな折、彼女はぽつりぽつりとその話を語りだした。 人形が動くとは、所謂怪談だ。 私は少し面をらった。彼女がそんな話をするなんて思ってもみなかった。 「怖い話ですか?」 聞かずともわかる質問をした。私の感情の機微は、きっと眉辺りに表れているだろう。馬鹿にするつもりは無いが、この時代に、という思いが少なからず漏れる。どんな怖い話をするのだろうとは思えず、どんな表情を

    のいぶいいもれそ。みるぐいぬかういとうょぎんに - スウィーテスト多忙な日々
  • 優しさに包まれたなら - スウィーテスト多忙な日々

    駅に着く直前、眼前のシートからアラーム音が鳴った。 油を含んだ髪の、少しふくよかな女性が眠り込んでいて、音は彼女の方から鳴っている。その他大勢の人間がそうであるように、彼女も次の大きな駅で降りる予定なのだろうか。しかし、彼女は項垂れた頭を上げる気配を一向に見せない。よほど疲れているのだろうか。 周囲の視線が控えめに彼女に向けられる。砂山に放り込まれた磁石みたいに、彼女は私たちを釘付けにしている。 目的駅はもうすぐだ。 私はごくりと唾を飲んだ。 よく見ると、女はイヤフォンをしている。きっとそのスマホで音楽でも聴いていたのだろう。でも今は、アラーム音がイヤフォンを通さずに直接鳴っている。きっと彼女の耳にはアラームがかすみがかって聞こえているか、あるいは聞こえていないのだろう。 乗り合わせたギャルは思った。 わかる。あるよねこういうパターン。 イヤフォンを通して聴いていた音楽が突然止まり、おいお

    優しさに包まれたなら - スウィーテスト多忙な日々
  • 変な話 - スウィーテスト多忙な日々

    が飛び出してきたのだ。 その日、私たちは久しぶりに二人で晩御飯をべに行った。その帰りの出来事だ。 人気ひとけも車っ気もない山中を走っていると、道路脇の茂みから突然が飛び出してきた。 ちょうど話題が尽きていたのでカミ子は運転に集中していただろうし、そのが目につきやすい真っ白なだったおかげもあってか、どうにか轢き殺さなくて済んだ。 びっくりしたぁ。あっぶな……。小田ちゃん大丈夫? カミ子こそ大丈夫? と私たちはひとしきり驚きを口に出したりお互いを心配しあって、それでようやく落ち着いた。 急ブレーキと私たちの興奮が夜の中にすっかり吸い込まれると、山中はしんと不気味に静まり返る。ヘッドライトに照らされたアスファルト道を、一匹の虫がふらふらと飛んでいた。 深呼吸を一つして、カミ子は再び車を走らせた。 「あーびっくりした……」 よかった、と思った。私が運転していたら、もしかしたらを轢くか脇

    変な話 - スウィーテスト多忙な日々
  • 嘘から出たまこと - スウィーテスト多忙な日々

    SNSの発達した昨今。わずか十数年前には考えられなかったような、奇想天外な発想で生業を得る若者が次々と生まれている。 コスプレ屋、拡散屋、おごられ屋など、大学を卒業して一流企業への就職を夢見た我々世代では考えても考えつかないような柔軟な発想に、ただただ息を漏らすばかりだ。梅沢誠 氏もまた、その一人である。 梅沢氏はSNSで呟く嘘が話題になり、映像・出版・芸能と多方面へその才能を発揮し続けている。 ――早速でなんですが、何か一つ頂けませんか。 ハンガーって触ったことないです。 ――あはは。近年、自営業だとか起業という枠を飛び越えたような方法で働く人が増えていますね。梅沢さんの場合はどなたかを参考になさったんですか? いえ、参考だとか真似しただとかというのは特になくて。昔からホラ吹きとかオオカミ少年だとかって言われてたんですよ。それでそのまま大人になった時に、あ、これはもしかすると特技かもしれ

    嘘から出たまこと - スウィーテスト多忙な日々
    single-father-ajitama
    single-father-ajitama 2021/05/13
    全然面白くない!!!(嘘ぴょ〜ん( ̄▽ ̄))
  • もうたべられないかな、と思ってからさらに三日後、もう食べられないよな、と思う - スウィーテスト多忙な日々

    収穫された野菜は生きているのだろうか。 宇垣美里は涙を流しながらそう思った。 彼女のその涙は、切っていた野菜に由来する。玉ねぎをみじん切りにしている時のことだった。 少なくない年月を生きてきて、初めて抱いた疑問だ。この歳になって湧き出てくる疑問としては大変に純粋で、それだけで少し幸せな気分になる。新しい曲のフレーズを思いついたような喜びがあって、一人きりにもかかわらずキッチンで目を見開いた。とはいえ宇垣美里は作曲家ではない。自分がシンガーソングライターで、何気ない暮らしの中で歌詞やメロディーが生まれる時はこんな気分なんだろうか、と考えた。 宇垣美里がそう思ったのは、自分が手に掛けた玉ねぎを憐れんでのことではない。そこまで繊細な人間ではない。 彼女の目に映った、じゃがいもがそうさせた。 そのじゃがいもは、キッチンの隅にある野菜かごに入っている。ラタン製の野菜かごにぽつんと、取り残されたように

    もうたべられないかな、と思ってからさらに三日後、もう食べられないよな、と思う - スウィーテスト多忙な日々
  • 人だかりの話 2/2 - スウィーテスト多忙な日々

    tthatener.hatenablog.comつづき 「怖いだとか、浮浪者が住み着いてるだとか、そういうことじゃなくてね、行ったってなぁんもありゃせんから、誰も近寄らん場所だったのよ。あそこは。ただ雑草が生えてるだけだもの」 後ろ手を組み、黒山の方を振り返りながら、当時を思い出すように祖母は言う。 「そこがなんで山になったわけ」私は当然の疑問を口にした。「じゃあ、あの山は人工の山ってこと? そんなの聞いたことないけど」 そんなはずがないだろう、と思った。人の力でどうこうできる大きさではない。それに、たとえあれが人工物だとしたら、もう少し規則的な造形であったり、効率的に通過できる道を作るはずだ。幼い頃から幾度となく通った黒山は、自然そのものにしか見えない。 「人だかりの山、っちゅうのは聞いたことがあるね?」 「うん」 私は頷く。昔、まさに祖母の口から聞かされた言葉だ。学校を終え、ランドセル

    人だかりの話 2/2 - スウィーテスト多忙な日々
  • 人だかりの話 1/2 - スウィーテスト多忙な日々

    彼女に腕枕をしながら、私は山のことを思い出していた。 私の故郷には、春になると桜が咲き、秋になるとモミジやカエデ、カツラなどが鮮やかな紅葉を見せる山がある。 山の名前を「黒山」という。 木々が色づく季節には遠方から多くの観光客が訪れて、彼ら彼女らの服や車の色が加わると、山はさらに鮮やかで賑やかな光景を見せる。 久しぶりに帰省したある日、実家の縁側でその黒山を遠くに眺めていると、庭で花壇の手入れをしている祖母が呆れ声を上げた。 「あぁあぁ。まぁたあんなに人が集まってら」 垂れ下がった瞼のせいで細くなった目をさらに細めて、祖母はため息をつく。 ぎっしりと生えた木々の隙間から、時々青い色や白い色が覗く。黒山の山道を走る車たちだ。 しっかりと舗装されたアスファルト道がありながら、黒山を進む車やバイクや自転車は誰もがみなその速度を緩める。 黒山には人を引き付ける魅力があるのだ。観光目的であろうと、そ

    人だかりの話 1/2 - スウィーテスト多忙な日々
  • 鷹は本当に爪を隠すか - スウィーテスト多忙な日々

    私は脳無しだ。 部屋は汚い。衣類はもちろん、ありとあらゆる物がありとあらゆる引き出しや収納から放り出されている。 私は衣装ケースを根っこまで引き出し、頭を突っ込んでそれを探す。五段に重なった小部屋が三列連なるケースに次々と頭を突っ込む。順番も守らずに、目についた小部屋に何度も頭を潜り込ませる。 それはどこにも見当たらない。 ピンポン、とインターフォンが鳴る。 音の鳴った方に顔を向ける。視線の先には、照明の点いていない真っ暗な玄関がある。 私は視線を戻す。散らばった衣類を一つずつ持ち上げては、その下を確認する。何度も同じ服を持ち上げて、何度も同じ場所を探す。 ピンポン、とインターフォンが鳴る。 「すいません」と声が続く。 私は立ち上がり、玄関の戸を開ける。 男が立っている。男はダンボール箱に貼られた紙を剥がすと、私に言う。 「お願いします」 私は男の差し出した紙を見つめる。男の顔を見つめる。

    鷹は本当に爪を隠すか - スウィーテスト多忙な日々