筑摩書房は今年2020年に、創業80周年を迎えます。これを記念して、ちくま新書の新シリーズ『世界哲学史』(責任編集:伊藤邦武、山内志朗、中島隆博、納富信留、全8巻)の刊行を開始いたしました。 古代から現代まで、時代を特徴づける主題から諸伝統を同時代的に見ていき、人類の知の営みを新たな視野から再構築する試みです。 1月に刊行された『世界哲学史1――古代Ⅰ 知恵から愛知へ』より、納富信留先生による序章を公開いたします。 †「世界哲学」と「世界哲学史」 今、「世界哲学」が一つの大きなうねりとなっている。これまで西洋、つまりヨーロッパと北アメリカ中心に展開されてきた「哲学」という営みを根本から組み変え、より普遍的で多元的な哲学の営みを創出する運動、それが「世界哲学」と呼ばれる。私たちが活動する生活世界を対象とする哲学、多様な文化や伝統や言語の基盤に立つ哲学、そして、自然環境や生命や宇宙から人類を反