山の中腹に点在する伝統的な家。パプアニューギニアのユプノ渓谷で撮影。(Photograph by Rafael Núñez) シベックさんの家は斜面に建っていて、扉は坂の上に面している。つまり扉の外は上り坂だ。ところが、扉から反対を向いて家の奥に進むとき、彼は「上り坂」を歩いている。家の床は水平であるにもかかわらずである。なぜなら、シベックさんたちの言語では、屋内には屋外と無関係な架空の坂が存在するためだ。 これは、ユプノ族の言語に見られる顕著な特徴の一つだ。パプアニューギニアのフィニステラ高原に暮らす約8000人がこの言語を話す。世界を見渡すと、左・右などの体を中心とした対比、東・西などの基本的な対比が多くの言語で使われているが、ユプノ語では現地の地形を基準に空間的な関係が表現される。(参考記事:「各地で火山噴火:パプアニューギニア」) 環境を基準にした方位の表現は決して珍しくない。北極
![家の中に坂や川? ユプノ族の言語世界を解明](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/84dfd6a7c913aa910b8c2b9b98df070cca01a7c5/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnatgeo.nikkeibp.co.jp%2Fatcl%2Fnews%2F16%2F041500140%2Fph_thumb.jpg)