笠原十九司、『日本軍の治安戦 日中戦争の実相』、岩波書店(シリーズ 戦争の経験を問う) ひきよせて寄り添ふごとく刺ししかば声も立てなくくづをれて伏す 本書は歌人・宮柊二の上に引用した歌の紹介からはじまっている。自らも歌集を出しておられる笠原氏らしい導入だが、宮柊二は独立混成第三旅団に所属して、山西省で「治安戦」を戦っていたのである。その治安戦のなかで展開されたのが「燼滅掃討作戦」や「無人区(無住地帯)」、いわゆる三光作戦である。 華北での日本軍の戦闘ないし三光作戦については、さほど多くはないもののすでにいくつかの文献がある。本書の特徴は日本軍上層部の視点、前線の将兵の視点、そして中国側の視点、と多角的に「治安戦」の実相を記述している点であろう。第5章では3つの地域について日本側の記憶と中国側の記憶をつきあわせる作業がなされている。もう一つ、日中戦争全体(あるいはアジア・太平洋戦争全体)の流
以前にちょこっと言及した岩波のシリーズ「戦争の経験を問う」、笠原十九司さんの『日本軍の治安戦――日中戦争の実相』が刊行されたのでいま読んでいるところです。同書では笠原さん自身の先行する業績として『岩波講座 アジア・太平洋戦争 5 戦場の諸相』に収録された「治安戦の思想と技術」が言及されているのですが、後者の目次と「戦争の経験を問う」の全巻構成を比較すると、このシリーズそのものが『戦場の諸相』の発展という側面をもっていることがわかります。笠原さん以外に両方に寄稿している研究者の書名(予定を含む)と論文名を「戦争の経験を問う」『戦場の諸相』の順に並べると次のようになります。 山田朗、『兵士たちの戦場――体験と記憶の歴史化』/「兵士たちの日中戦争」 吉田裕、『兵士たちの戦後史』/「アジア・太平洋戦争の戦場と兵士」 中村秀之、『〈特攻隊〉の系譜学――イメージと語りのポリティクス』/「特攻隊表象論」
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く