人類史上最大の革命は、産業革命でも情報革命でもなく、1万年前に遊動生活から定住生活に移った「定住革命」だった。普通これは農耕による食糧生産にともなうものと考えられ、「新石器革命」などとよばれているが、著者はこの通説を批判し、定置網による漁業が定住生活のきっかけだったと論じる。つまり農耕は定住の原因ではなく、結果なのである。 1万年ぐらいの間では遺伝的な変化はほとんどないので、われわれの本能は遊動時代のノマド的な生活に適応していると考えられる。しかし1万年間の定住生活によって、農業・漁業に適応した文化が形成された。この遊動的本能と定住的文化の葛藤が、人間社会の根底にある。 その一つが、公平の感情である。行動経済学でよく知られるように、たとえば1万円を2分割する提案をし、相手がその提案を拒否したら両方とも0円になる最後通牒ゲームでは、「合理的」な提案は相手に1円を与える(自分が9999円と