明治時代、我が国で初めて制定された近代的民法がフランス人顧問ボワソナード(1825-1910)によって起草されたものであることは、多くの人が知っているだろう。では、現在のベトナムとカンボジアの民法が日本の支援によって成立したものであることは、どのくらい知られているだろうか。 1991年のソ連崩壊を契機として、特に旧東側に属する諸国は相次いで民主化と市場経済の導入を目指すようになった(もちろん、そのどちらを重視するかは国ごとに温度差がある)。だが、WTOを典型とする世界経済体制への参入と経済発展を狙う彼らが直面したのは、市場経済の基礎となるさまざまな要素が彼らの従来の国制には欠けているという事態であった。たとえば外国企業に投資を求めようとしても、土地所有権も、公正でアクセス可能な裁判制度も十分には発達していない。弁護士を含む法律家の数も不足している。このような状況を改善し、体制移行国の経済発