『群像』3月号掲載。『星が吸う水』は、村田沙耶香のこれまでのものと比べて、その情念とでもすべき感がやや、すっきりと整理され、たとえば本谷有希子のそれをそうというならば、ポップなエキセントリックさをも含んだ小説になっており、このあたりはもしかすると、作中人物の年齢が作者自身に近しく設定されているからなのかもしれないが、生きづらい世界だからこそ自分で自分をつくり直さねばならないこと、あるいは、自分で自分をつくり直すのがこの世界では難しいこと、といった趣旨において、主人公の年齢がずっと若い『ギンイロノセカイ』や『マウス』に通じる点を持っている。そろそろ三十歳代に入ろうとする鶴子は、性交(セックス)について、世間一般からすれば、特殊な考え方を持っていた。濡れない膣ではなく、突起物の高まりによってもたらされる欲情を勃起に喩え、やがて迎える絶頂を射精だというふうに信じ、しかしじっさいには射精しているわ