ポーランドの首都ワルシャワから南西に250キロほど行ったところに小さな町がある。ポーランド以外では名も知られていない辺鄙で荒廃したその場所に、当時、最大のユダヤ人絶滅収容所があった。その名をアウシュビッツ強制収容所・・・戦時中、そこで悪魔でさえなし得ない残虐行為の数々が行われた。 アウシュビッツは、平らな盆地の底に位置し、その周囲を大小の濁った沼に囲まれていた。そのため、湿気が多く悪臭に充ちて疫病が流行る最悪の条件が揃っていた。それは、あたかも何千年も生に身放されたような不吉な場所と言ってよかった。実際、死神が招き寄せたかのごとく、この地に、殺人工場とも言える最大の絶滅収容所が建設されたのであった。そして、ここで300万を下らぬユダヤ人が虫けら同然に虐殺されたのである。かくして、アウシュビッツの名は、おぞましい血塗られた地名として、人々の頭に永久に刻み込まれることになるのである。 この地獄