Winny事件の論評において、もう一つたまに見られる思考の罠がある。それは、Winnyはどう考えても作者が著作権侵害を幇助する意思で作ったものだから、同じような機能を実装する他のソフト(たとえばFreenet)とは違って問題だ、という考え方だ。この発想の何が問題なのか。それを考えるためには、刑法の基本的な思考様式と、それが今回の判決でどのように適用されているのか、それを理解しておいた方が良いだろう。そんなわけで、この文章は、もともと「Winny事件論評の旧行為無価値論を批判する」という表題でまとめていたのだけど、内容的には上記タイトルの方がしっくり来ると思って多少書き直したものである。 犯罪の成否は、一般的には次の3つの要素で判断される。 構成要件該当性 刑法(特別法も含む)の条文で規定された犯罪に、客観的に該当する行為があったかどうか、という要件。たとえば、人を殺したら殺人罪になるけど、