ベテラン漫画家の間に、原画を保存・展示する国立美術館の設立を求める声が高まっている。原画の散逸を防ぐ目的に加え、作品の価値が上昇し巨額の相続税が発生する可能性があるためだ。「島耕作」シリーズなどで知られる弘兼憲史さん(70)は「『団塊の世代』の漫画家たち共通の悩み」と指摘。こうした中、地方の美術館が取り組むある事業に注目が集まっている。(藤沢志穂子) 「売りたくはなかったが…」。料理漫画などでヒット作を持つベテラン漫画家は昨秋、都内で開いた展示会で、自らの原画を泣く泣く販売した。価格は1枚当たり1千〜3千円。編集者からは「貴重な資料が散逸する」との声が上がった。だが、この漫画家は「自分がいなくなった後、家族が原稿を処分する気持ちを考えると、欲しい人に買ってほしかった」などと心境を語っている。 弘兼さんも、自らの原画を母校の早稲田大学や故郷の山口県岩国市、出版社などに寄贈することを考えている