人間、疲れてくると甘いものが食べたくなる。 それは人か、妖怪なのかよく分からない存在とされるS松氏と言えども例外ではない。その日も様々な液体を出しきった彼は、徒労感とともに無性に甘いものが食べたくなったのだ。 いつもならローションティシューをむしゃぶるところではあるが、生憎と最後の一枚は今朝の朝食として食べきってしまっていた。 天井を仰ぎ見ながら独りごちる。何か甘いものが欲しいなぁ、と。 足元のゴミ箱から中の生ゴミが発酵した臭いが立ち込めている。そろそろ中身を捨てないと下がるのは自分の生活の質と社会的評価ばかりである。 最も彼をよく知る友人は口さがなくこう言うだろう。「彼の社会的評価なんて地に堕ちきっているよ」と。 億劫な気持ちを抱えながら、緩慢にゴミ箱の中身を取り出すと棲家としている古びたアパートの扉を開けた。扉の外の空気はまるで東南アジアだ。夕方の斜線光に眩しく照らされた街並みと肌にま