知的で勇敢な女性の半生記 かつて私が10代だった頃、エヴリシング・バット・ザ・ガールは「おしゃれな先輩が好きな音楽」でした。だから最初は「自分より年上の人たちのもの」なんて印象を持っていたものだけれど、CDとレコード(そう、あの頃はCDとレコードだった)を1枚ずつ聴くうちに、そんなのもう関係なく大好きなバンドのひとつになりました。80年代から90年代、音の感触を時代にあわせて変えながらも、しみじみ美しい曲を奏で続けたトレイシー・ソーンとベン・ワットのふたり組は、今でも自分にとって特別な存在です。 さて、彼らの最後のアルバムがリリースされてからちょうど20年になる今年、トレイシー・ソーンが2013年に上梓した回顧録『安アパートのディスコクイーン』(原題:Bedsit Disco Queen: How I grew up and tried to be a pop star)が翻訳されました。