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ブックマーク / oizumi-m.hatenadiary.org (14)

  • 核という呪いー南相馬編(3) - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    3 「男が弱い。父さんたちが圧倒的に弱い。 避難先で夫と別れて母子で南相馬に帰ってくる。そんな例をいくつも見ました」 僕はこれまで、それは「核という呪い」の「人と人の間を引き裂く」という性質のためであると思っていた。もちろんそうした側面もあるはずだが、近藤先生には、若い父親たちが歯痒く見えてならなかったようだ。 「とにかく家族を守ろうとしない。昼からパチンコ、酒。仕事を探さない、仕事をしようともしない。そのうち補償金で外で酒飲んで女ができる。父さんにあるまじき行為の連続なんです。 その上家庭内で暴力を振るいだす。あるいは家族をまったく無視する。家族の問題は山積みでしょう。子供の教育をどうするか。避難所から出て、安全な場所で新しい生活を始めるのか、それとも南相馬に戻るのか。精神的に打撃を受けた祖父母をどうケアするか。ところが、何一つ対峙しようとせずにゴロゴロしている。 父の権威の失墜なんです

    核という呪いー南相馬編(3) - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
  • 核という呪いー南相馬編(2) - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    2 「南相馬の若い父親たちは、ちゃんと家族を守れるかどうか、今回試されちゃったんですよね。近藤先生は、そのために引き裂かれた夫婦を、結びつける活動をしているんです」 堀先生がそう言って紹介してくれた人物がいた。 よつば保育園副園長・近藤能之先生。通称ヨシユキ先生。 イケメンである。 背が高く体はがっしりとしていて、全体的な印象は若いころの闘莉王をやさしくしたような感じだ。 3月5日、平成24年1月に開園したよつば乳児保育園西町園にお邪魔した。 出入り口近くに大きな線量計が立っており「0.187μSV/h」という表示があったので少し安心した。この数値なら、福島第一原発から100キロ以上はなれた日立市にある我が家とほとんど変わらない。子供たちのことを考え、よほど徹底的に除染をしたのだろう。 そのことを近藤先生に伝えると、 「そうですか。でも、これでも線量が高いと批判されることもあるんです」 と

    核という呪いー南相馬編(2) - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
  • 核という呪いー南相馬編(1) - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    (1) どういうわけか南相馬に来ると酒を飲んでいる。これは、去年からインタビューをするたびに「ターキー」という料理のおいしい洋風居酒屋に入り浸ったためであろう。 今回もターキーを待ち合わせ場所にしていたのだが、なんとパーティーで貸切であった。南相馬の寒空の下、入り口付近でぽつんと待っていたインタビュイーの堀先生は、しきりに調査不足を詫びると、近くのイタリアン・レストランに連れて行ってくれた。 昨夏以来の再会を祝し、まずはビールで乾杯。 堀有伸医師は2012年4月から南相馬市の雲雀ケ丘病院に勤務する精神科医である。 堀先生は昨年から「みんなの隣組」という団体を組織し、地域の人たちと毎朝ラジオ体操をやり、その他おさんぽ会、読書会などを企画してきた。ラジオ体操と自殺防止というのが僕の頭の中でうまくつながらなかったのだが、「朝イチで、朝の光を浴びて運動する。それがいいんです」とラジオ体操の効用をと

    核という呪いー南相馬編(1) - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
    stonedlove
    stonedlove 2015/06/17
    大泉実成さんによる南相馬市現地レポート。広く読まれてほしい。
  • ダメな宗教の条件 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    前回の続き。 オウムの体験修行をしていた頃「よく洗脳されませんね」みたいなことを言われたのだが、それもそのはず、僕は徹頭徹尾宗教としてのオウムを評価していなかった。 「ダメな宗教」としか思っていなくて、そこになんでこんな善人が捕らわれていくのか、ということに興味があった。 宗教系ライターの経験から、まずダメなのは「予言」と「超能力」を売り物にするところである。予言という意味ではエホバの証人がそうで、30年おきぐらいにハルマゲドン予言を起こしては外し続けている。麻原は1997年は「真理元年」になり、自分は日に君臨すると予言していた(笑)。また、オウムが超能力を売り物にしていたのは周知の通り。 鎌倉時代に活躍した明恵にも不思議なことがよく起こったようだが、彼は、「それは仏教の修行をすれば自然に起こることで、別にたいしたことじゃない。くだらないことで大騒ぎするもんだね」と述べている(「伝記」よ

    ダメな宗教の条件 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
  • 麻原の顔、ラマナの顔 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    このところ、テレビや雑誌の取材で元オウム信者によく会う。先日はひかりの輪の上祐さんに会った。 僕自身、取材のため2年近くオウム内で体験修行してきたので(上祐さんの説法も聞いた)、知り合いの元信者に会うと同窓会をやっているような、懐かしい気分になる。脱会した人たちはみな麻原の呪縛から逃れるための凄まじい体験をしており、何か憑き物が落ちたような柔和さで話をしてくれる(ちなみに上祐さんのインタビューは「徹底検証 世紀の大誤報 別冊宝島2281」宝島社)。『麻原彰晃を信じる人びと』というの中にも書いたが、僕は麻原に聖性を感じたことがまったくなかった。僕が聖性を感じ続けたのは、彼らのような信者たちだった。 いまさらながらなのだが、元オウム信者たちは、どうして麻原のあの顔に聖性を感じることができたのだろう、と思う。僕はオウム内で数限りなく麻原の顔を見たが、傲慢さ、征服欲、攻撃性の強さ、といったものし

    麻原の顔、ラマナの顔 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
  • スキゾ・エヴァンゲリオンはパラノと姉妹本です - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    先日竹熊健太郎さんから久しぶりにメールをもらって、最近どうしているのかなと思って調べていたら、「スキゾ・エヴァンゲリオン」の電子書籍版の予約受付がもう始まっているのを知りました。契約は交わしてあったのですが、なんか先のことだと思っていたのでした。しかも竹熊さんはちゃんと宣伝もしておいてくれました。大人だなあ。そんなわけでお返し。 庵野秀明スキゾ・エヴァンゲリオン好評予約受付中。竹熊健太郎氏の「パラノ・エヴァンゲリオン」と姉妹です。編者の二度と読み返せない恥ずかしい詩も収録中(してるよな?)。 スキゾ・パラノは今となっては懐かしいですね。久しぶりの大泉広報部長でした。

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  • 核という呪い ブログ版 焼身自殺死訴訟 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    先日、福島の原発事故後に焼身自殺をした渡辺はま子さんの地裁判決が下り、裁判所は自殺と原発事故の因果関係を認め、原告側が勝訴した。画期的な判決であった。 昨年原告の渡辺さんのインタビューを行ったのだがボツになってパソコンの肥やしになっていたので、よい機会と思いこちらに載せることにした。 東京電力は事故被害者の負担を配慮し、控訴をするなどしてこれ以上の負担をご家族など関係者にかけないよう希望する。 1 「おたくらはね、いつもそうやって被害者の家族のプライバシーを暴きたてるんだよ」 電話の声はいきなり怒っていた。 この仕事をしていると時々こういうことがある。単に取材依頼の電話をしているだけなのだが、それがいとも簡単に相手の怒りの導火線に火をつけてしまうのだ。何が困るといって、怒っている人間からインタビューを取ることほど難しいことはない。 2011年7月1日未明、避難先から計画的避難区域にある福島

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  • 核という呪い ブログ版 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    4月20日に、友人のノンフィクションライター・木村元彦とドキュメンタリーのVTRをつくり、BS11の「ONZE」という番組で放映してもらって、スタジオで元村有希子キャスターや二木啓孝さんと話しをした。「サリン事件から19年 元オウム信者たちは今」みたいなタイトルだったと思う。 これからアップするのは、その取材で知り合った林久義さんというチベット仏教徒で、オウム信者の脱会カウンセリングをやっている人から依頼された文章である。オウム信者の疑問にはきちんと仏典に当たって答えることのできるすごいひとで、脱会させた信者も多く、カウンセリング成功率も高い。 また福島の支援も行い、原発問題全般にも目の行き届いている人だった。 この原稿は2010年の福島原発事故前から書かれていたのだが、書いている途中で原発事故が起こってしまい、2011年の5月に「怖い噂」誌上で発表したもので、さまざまな原子力問題に触れて

    核という呪い ブログ版 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
    stonedlove
    stonedlove 2014/05/13
    『怖い噂』というマイナー誌での連載だったためあまり知られていないが、この渾身のルポルタージュはもっと読まれるべき。
  • 否認・抑圧・忘却・反復 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    事故から2年ということで、先週あたりから大量の福島原発事故特集が組まれていますね。JCO事故のときもそうでしたが、事故何周年で番組が集中するというのは、通常のニュース枠からはどんどん外れていきますよ、という徴です。首相官邸前の抗議デモも、最大時で15万とか20万とか言われましたが、先日調べたら200人代まで減っていたとか。今後増えるにしても一時的現象にとどまるでしょうね。「忘却」というやつですね。残念なことですが。 昨日、奥様が焼身自殺された川俣町山木屋の渡辺幹夫さんのところに行って話を聞きました。詳しくは後でウェブマガジンで発表する予定ですが、奥様が原発事故の避難生活によってうつ病になり自殺をされたことは、2人の精神科医の判断からも、常識的に考えても間違いないところだと思います。この問題については、初めは裁判にするつもりはなく、東電に交渉に出向いたのだが東電の対応は門前払いだったというこ

    否認・抑圧・忘却・反復 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
  • エヴァQ - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    みなさまごぶさたしております。エヴァQでございます。今回特に大きな感想はないんですけど、とびしんが『「Q」の感想書かないんですか』とうるさいので、思いついたことを書いておきます。ネタばれ全開ですので、ダメな人は読まないこと。 まず思うのは、相変わらず全力の庵野監督の仕事ぶりで、当に頭が下がります。 で、今回は学園パートがないんでえらい重かったですね。神話世界に放り込まれたようでした。やっぱ緩急は欲しいなと思います。緩がなくて急だけだから今回Qなのか、などとくだらないことを考えてしまいました。こんなことなら「エヴァンゲリオン緩」というのも見てみたいですね。「補完? ま、いいんじゃね」とかとことんゆるいやつね。 それにしても、今回なぜこのようなウツ展開になったんでしょうか。 話は「破」のラストまでもどるわけですけど、全体的な傾向として、シンジ君がオトコなわけですよ、「破」は。シンジ君、ってい

    エヴァQ - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
    stonedlove
    stonedlove 2012/12/13
    『スキゾ・エヴァンゲリオン』の大泉実成氏による聖書・神話・ユングを援用した『エヴァQ』感想。いきなり深淵に引きずり込まれるので心して読むべし。
  • 解き放たれた核という呪い、サヨナラノツバサ、広瀬隆 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    締め切りに追い回されているうちに、こんなに時間が経ってしまった。 今出ているだろうと(思われる)のは、ええと、何点なんだろう。 『怖い噂』では前回の続き、『解き放たれた「核」という“呪い”』という記事を書きました。福島の原発事故について、特にその心理的な面について取材しながら書いたものです。いわば精神的な被害ですね。次はこの呪いが、どのようにPTSDを作っていくのか、福島の現実を取材しながら、JCO事故の際の自分の母親と比較しながら書いてみたいと思います。 『原発の深い闇2』では、広瀬隆氏のインタビュー「年間被曝線量を操る被曝マフィア」という記事の聞き手と構成をやりました。被曝がいかに隠蔽されてきたのか、その歴史が知りたくなったものですから。 実は僕は広瀬隆という作家をあまり信用していなかったんですが(というのもいつも話がでかすぎるので)あってみたら子煩悩、孫煩悩のキュートなじいちゃんでし

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    stonedlove
    stonedlove 2011/11/04
    『怖い噂』の記事、今回も凄絶です。
  • 福島第一原発事故の精神的被害の補償について - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    なんか仕事が忙しくなってしまってこちらはしばらく放置していたんですが、こんなご時世だし活動報告ぐらいはしたほうがいいだろうと思い、ぼちぼちやることにしました。 で、5月16,17日と東京新聞の夕刊に記事を書いたんですが、半分ぐらいに削らねばならなかったので、こっちに元バージョンを載せておきたいと思います。 福島第一原発事故の被害補償について、現在さまざまな意見が述べられている。その中でも、最近になって精神的な被害の補償をどうすべきかという議論が見られるようになってきた。1999年にJCO臨界事故に巻き込まれた母の精神的被害(PTSD)の問題について加害者のJCOと交渉し、その後2002年から2009年まで損害賠償裁判を行った体験から、今回の事故の精神的な被害の補償をどうすべきかという点について、経過を説明した後に若干の私論を述べたい。 母はJCOの敷地から約80メートル、事故現場の転換試験

    福島第一原発事故の精神的被害の補償について - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと
  • What is OTAKU? ーオタクとは何か 第20回男の中の女、女の中の男2 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    1 そろそろ腐女子について考えねばなるまい、と思い、手始めに『腐女子彼女』『となりの801ちゃん』などの関連書を買ってきて読む。 なんというか、こわごわと読み始めたわけだが、自分の知らない異界の話というのはやはりそれなりに面白く、再読三読する。異様な話の連続とはいえ、扱っているのが女の人たちなので、少しゆるやかな気分になる。ふーむ。これらの文献から推測すると、2006年から2007年にかけて、腐女子ブームというのが静かに展開されていた模様である。 非常に印象的だったのは、801ちゃん1巻のラストの四コマ。久々の彼氏のスーツ姿に思わず801ちゃんの中身が飛び出す。 「ギョヘーーー! スゥツゥ!! スゥツゥ!! スーツや!! ええのう!! たまらんのう!! グェッヘッヘッヘッヘッへェー!! 男前が3割増やないか!!」 声を発しているのはかわいい女の子である。しかしこの反応は、制服を前にしたオヤ

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  • What is OTAKU? ーオタクとは何か 第18回男の中の女、女の中の男 - 核と萌えの日々〜ライター大泉実成のたわごと

    長らくのご無沙汰でした。 「オタクとは何か」の連載を草思社さんで続ける約束になっているのですが、担当が会社を再建中の身でなかなかうごけないとのこと。そこで、あまり中断が長くなると取材に張り合いがなくなるので、草思社さんの了解を得てこのブログで連載を続けることになりました。それでは第18回。 1 店でレンタルDVDのディスクを拭きながら、先輩のHさんとの会話。レンタル部門では今年もアルバイトの半数以上がコミケに行くのだが、Hさんも初参加するという。 「何でも挑戦だー、って言われたもんですから」 「それじゃこれから『オタク』と呼ばれても反論できませんね」 「たしかにコミケはなあ。何か一つのキャラにはまったー、というのとはわけが違いますからね」 Hさん自身、外見からするとオタクというものとはかけ離れている。すらりとした長身で、メガネを外せばいわゆるイケメン。ファッションセンスもよく、彼女もいる上

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