3 「男が弱い。父さんたちが圧倒的に弱い。 避難先で夫と別れて母子で南相馬に帰ってくる。そんな例をいくつも見ました」 僕はこれまで、それは「核という呪い」の「人と人の間を引き裂く」という性質のためであると思っていた。もちろんそうした側面もあるはずだが、近藤先生には、若い父親たちが歯痒く見えてならなかったようだ。 「とにかく家族を守ろうとしない。昼からパチンコ、酒。仕事を探さない、仕事をしようともしない。そのうち補償金で外で酒飲んで女ができる。父さんにあるまじき行為の連続なんです。 その上家庭内で暴力を振るいだす。あるいは家族をまったく無視する。家族の問題は山積みでしょう。子供の教育をどうするか。避難所から出て、安全な場所で新しい生活を始めるのか、それとも南相馬に戻るのか。精神的に打撃を受けた祖父母をどうケアするか。ところが、何一つ対峙しようとせずにゴロゴロしている。 父の権威の失墜なんです