今年は世界各地で音楽祭が中止に なぜ? サイケデリック・ロック・フェス、デザート・デイズ、キックオフ・ジャムなど———。 米国各地で音楽フェスの中止が相次いでいる。 これは米国だけでなく、欧州、オーストラリアなどでも起きており、英国では2024年だけで60以上の音楽祭が中止になった。
欧州と北米のあいだには大きな隔たりがある。それは洗濯に関わることだ。洗濯物を乾かすとき、欧州はおもに自然乾燥に頼り、物干しスタンドのうえに広げたり、外で吊り干ししたりする。米国やカナダの家庭はたいてい、洗濯物を乾燥機で乾かす。 その隔たりは、かなり際立っている。欧州で最も乾燥熱心なデンマーク人が洗濯物を機械乾燥する割合はたった28%である一方、米国の家庭のおよそ80%が毎週タンブル乾燥している。このギャップは何十年も存在してきたし、外国からの訪問者を大いに困惑させてもきた。 ところが日本では、大西洋の両岸からやってきた旅行者が、洗濯物を乾かす第三の道があると知って驚くことがよくある。見よ、浴室乾燥機だ。 電化製品と部屋の境界をまたいだ装備 英語に訳せば「バスルーム・ドライヤー」となるこの浴室乾燥機は、電化製品と部屋の境界をまたいだ、巧妙な装備だ。浴室の天井に埋め込まれたヒートポンプが暖かく
国民議会選が目前に迫り、極右政党「国民連合(RN)」が存在感を強めるなか、フランスではこれに抗議する運動が各所で湧き起こっている。女性の権利を訴える団体の大規模デモ、サッカー選手キリアン・エムバペや女優のマリオン・コティヤールをはじめとする多数の有名人の反対表明……。 さらに、日本の「漫画ファン」コミュニティもRNへの反対を訴える。「『ONE PIECE』、『進撃の巨人』、『NARUTO -ナルト-』のファンでありながらRNに投票しようとするなんて、作品を理解していないか、作品の哲学をないがしろにしているかだ」。その真意とは? エマニュエル・マクロン仏大統領による国民議会解散を受け、6月30日と7月7日におこなわれるフランス総選挙。その選挙で、漫画がどのような役割を果たすというのだろうか? 間近に迫った投票を脅かす暗い危機を前に、日本の漫画など、とるに足らないようにも思えるが、選挙戦がイン
夢も希望もない、消費もしない、必要最低限のものさえあればいい──そんな「寝そべり族」と呼ばれる若者が中国で増えていることは以前から報じられてきた。この現象には、若者の就職難や激しい競争社会での疲弊などが影響していたが、最近では安定した仕事に就きオフィスで働く若者までも、やる気を失っているようだ。米「ニューヨーク・タイムズ」紙によれば、同国の若者たちのあいだで「パジャマ出勤」がブームだという。 「私は自分が着たいものを着ているだけ。ただ座っているだけなんだから、職場にドレスアップしていく必要はないと思うんです」 インテリアデザイナーのシンディー・ルオ(30)は、同紙の取材にそう答えている。昨年、12月になって寒くなるとルオはオフィスでフード付きのトレーナーの上にふわふわのパジャマを着るようになった。そのうちそれが習慣になり、やがて彼女はパジャマのトップスだけでなくお揃いのボトムスを合わせて出
トヨタといえばEVシフトへの遅れを指摘されていたが、ハイブリッド車に注力するという決断が効を奏していると、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じている。 EVに「無気力だった」トヨタ 今日のようなハイテク、ハイリスクな自動車業界では、運勢はすぐに変わってしまうものであり、トヨタ自動車ほどその好例はない。 少し前まで、トヨタは電気自動車の分野で危険なほど遅れをとっているように見えた。電気自動車のパイオニアであるテスラは急成長を遂げ、世界で最も価値のある自動車メーカーとなった。テスラの成功を見て、ゼネラル・モーターズやフォード・モーターといった他社は、多くの消費者がバッテリー駆動の自動車やトラックに乗り換える準備が整っていると判断し、遅れを取り戻すために数百億ドルを投資し始めた。 しかし、トヨタはもっと慎重だった──あるいは無気力だった、と批判する向きもある。トヨタは、これまで米国でわずか2車種
世界第2位の「漫画消費国」といわれるフランス。日本漫画が絶大な人気を誇るなか、これまであまり評価されてこなかったのが少女漫画だ。だが、ついに「shôjo」にも光が当てられはじめた。それには、熱烈なファンの力もある。 「絶対にアングレームに行かなくては」──ブログ「Club Shôjo」の管理人、オードリー・マニスカルコはそう決意していた。彼女が興奮する理由は、漫画家・萩尾望都(はぎお・もと)の来仏だ。2024年1月、フランス南西部の街アングレームで開催されたヨーロッパ最大級の漫画の祭典「アングレーム国際漫画祭」では、彼女の栄誉を称え、特別回顧展が催された。 1949年生まれの漫画界の巨匠、萩尾望都は、永遠の若さに囚われた吸血鬼一族を描いた『ポーの一族』(小学館)の作者だ。1970年代に日本で出版されたこの傑作がフランスに上陸したのは、2023年になってからだった。フランス語版を出版したアカ
「その漫画なら全巻持っている」、けれど「愛蔵版」や「完全版」という言葉に購買意欲をくすぐられるのは、作品のファンだからなのだろうか……。フランスでもいま、既存作品の「デラックス版」が急増している。その要因は、漫画市場の成熟だけではない。どうやらその裏には、フランス人の国民性、そして漫画への熱い思いが隠されているようだ。 フランスの漫画市場は、いまのところとても好調だ。しかし、この先の落ち込みを避けるためには、自己改革の必要がある。たしかに、2022年にフランスで販売されたコミック類「バンド・デシネ」の2冊に1冊以上が日本の漫画だった。だがいっぽうで、民間調査機関GfKのデータによると、2023年の1月から5月には、発行部数ベースで前年同期比18%の売り上げ減少が見られた。 競争が激しい漫画業界では昨今、いわゆる「デラックス版」が増えてきている。これらは特定の作品の刷新のため、カラーページを
モンゴルにいる多くのチベット仏教徒を導く「ボグド」の地位に、8歳のモンゴル人の少年が指名された。だが、それはモンゴルが中国とダライ・ラマの政治的な駆け引きに深く巻き込まれることを意味する。その複雑な事情を、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が現地で取材した。 その少年は、裕福で世俗的な人生を送る運命にあると思われていた。モンゴルの鉱業大手グループを経営する一家に生まれた彼には、首都ウランバートルにある本社からグループを導くために選ばれる日がやがて訪れたかもしれない。 ところが、その8歳の少年はいま、ダライ・ラマと中国共産党の争いの中心にいる。 すべてが変わったのは、彼がほんの幼児だった頃だ。ウランバートルにある広大な寺院を訪れた彼の父親が、彼とその双子の兄弟をある部屋に連れていった。そこでふたりとほかの少年7人は秘密の試験を受けた。 子供たちは、宗教儀式に使う物が散乱した卓を見せられた。親のそ
自然の森が成熟するまでには、少なくとも100年を要するという。だが、その「小さな森」は通常の森の10倍ものスピードで生育する──。2021年に亡くなった日本人研究者、宮脇昭が編み出した「宮脇式」森づくりが世界中に広がっている。 米マサチューセッツ州ケンブリッジ──かつてのゴミ捨て場の上に、その小さな森はある。生まれて2年にも満たない赤ちゃんだが、その森は少し、年上のように見える。 そこでは、ポプラの木は通常の2倍の速さで育ち、ウルシやユリノキもそれに追いつこうと頑張っている。雨水を流出することなく吸収し、雑草を抑え、昨年の干ばつにもめげずに森は生い茂っていった。バスケットボールコート1面分ほどの面積に1400本の若木が自生するこの森で、こうしたことが可能なのは、その肥沃な土壌と木々の密度に秘密がある。 この森は、世界中の高速道路の路肩や駐車場、校庭、ゴミ捨て場を森に変容させる一大ムーブメン
日々の買い物も航空会社提携のクレジットカードで決済し、特典航空券のためにこつこつと「マイル」を貯める、航空会社の「ステータス」を維持するために、高い年会費を払ってカードを持つ──あなたの周りにも一人や二人、こういう人がいるのではないだろうか。 米ヴァンダービルト大学ロースクール教授のガネッシュ・シタラマンは、マイレージプログラムの進化が航空会社を「片手間に飛行機を飛ばす金融機関のような存在」に変貌させたと語る。 米デルタ航空は9月、マイレージプログラム「スカイマイル」のサービスに変更を加えると発表した。これまでの利用金額と飛行距離の組み合わせに応じたステータス(上級会員資格)の付与から、利用金額のみに基づいた付与に切り替え、ステータス取得に必要な利用金額を引き上げる。 つまり、スカイマイルは「頻繁に飛行機を利用する人」ではなく「大金を使う人」のプログラムとなるのだ。この変更による衝撃はあま
8月31日からネットフリックスで配信がスタートした実写版『ONE PIECE』。それに先駆けて、本作の製作総指揮も務めた原作者の尾田栄一郎に、米紙「ニューヨーク・タイムズ」がインタビュー。『ONE PIECE』キャラクターの成り立ちや主人公ルフィのキャスティング、実写化を受け入れるきっかけとなった作品などについて聞いた。 ──『ONE PIECE』という、社会現象となるほどの大人気マンガ・アニメシリーズを実写化するにあたり、何が大事だと思われますか? マンガの実写化は、原作を逐一再現していけばいいというものではないんです。原作のファンが、キャラクターやそれぞれの関係性の何を愛しているのか。これを真剣に考えて、ファンの愛する要素に忠実であることがとても大切です。 優れた実写化作品は、ストーリーをそれほど変える必要がないんです。原作の読者が納得するような形で、役者がキャラクターを再現できるのが
ウクライナの反転攻勢が続くなか、プーチン大統領の「次の一手」はなにか? ロシアの著名な歴史学者で外交防衛政策評議会の名誉議長を務めるセルゲイ・カラガノフは、核攻撃を進言している。露誌「プロフィル」に発表された戦慄の論文をここに掲載する。 私が長年考え続けてきた見解についていくつか紹介したい。これは、先日開催された、31年の歴史の中で最も注目すべき会合の1つとなった外交防衛政策会議の後に最終的な形を成したものである。 高まる脅威 ロシアとその指導者は難しい選択に直面しているようだ。仮にウクライナで部分的な勝利、それどころか全面勝利を収めたとしても、西側諸国との対立を終結できないことがますます濃厚になっている。 ロシアがウクライナの4つの地域(ドネツク州、ルガンスク州、ヘルソン州、ザポロジエ州)を解放できたとしても、それは部分的な勝利でしかない。向こう1〜2年で現ウクライナの東部と南部全体を解
フランスでの爆発的な漫画人気はいま、食文化にも多大な影響を及ぼしている。「若い世代の想像力を拡大し、新たな生き方、そして食べ方の発見に寄与した」──仏誌「ロプス」はそう讃えながら、日本のアニメ作品に登場する食事の影響力を徹底分析する。 「ママ、ラーメン作れる?」 ある日曜日の午後、ソファで漫画を読んでいた12歳のリュバンは母親に尋ねた。 母は驚いた。彼女は料理が好きだったが、息子はマカロニグラタン以外のものは食べようとしなかったからだ。中学生の息子がたたみかける。「ナルトがいつも食べてるんだよ。すごく美味しそうなんだ!」 こうして母と息子は最高のラーメン屋を求めて、日本料理店が集まるパリ2区、サン・タンヌ通りに出かけた。 リュバンのケースは珍しいことではない。漫画のフランスにおける空前の大成功は、日本のグルメ人気も伴っている。 「当然のことです。食は日本文化をちょっと取り入れるのには最高の
日本人建築家たちの作品は、世界でも人気を集めている。日本の建築の特徴とはどんなもので、そこから見習うべきことは何か。そして人々を魅了する建築物に溢れながらも、日本の都市があまり美しくないのはなぜなのかを、英国人の筆者が自虐を交えながらユーモラスに語る。 世界で活躍する日本人建築家 日本を縦断中の外国人がよく思うことがいくつかある。着物はどんな場面にも驚くほど適応する。カメラを振りまわし、何千枚もの写真を撮りまくる大量の日本人観光客は、少なくとも1980年代にはお決まりのギャグだった。だが、彼らはただ時代を先取りしていただけであって、その他大勢の我々といえば、iPhoneのおかげでやっとそれに追いついてきているのだ。 当然のことだが、日本はある面において完璧な社会である。人々の正直さの基準の高さたるや、コンビニでは6円のお釣りを受け取り忘れただけで店員が追いかけてきてくれるし、電車はもちろん
神道系政治団体の政治的影響力 何百万人もの日本人にとって、神道は精神的修行というより文化的な修行だ。毎年正月を迎えると、多くの人が神社に参拝し、新しい年の幸運を祈る。また、恋愛や受験、就職がうまくいくように祈願する人も多い。 このような儀式は、決まった信条の下におこなわれているわけではない。土着の宗教である神道には、公式な教義も経典もない。一方、日本では一般的にほとんど知られていないものの、全国8万社の神社を包括する神社本庁の関係団体「神道政治連盟(神政連)」が、同性愛者やトランスジェンダーの権利などに対する保守思想の声を政治家のあいだに広めようとしてきた。 日本はG7の国のなかで唯一同性婚を合法化していない。2023年5月のG7広島サミットに向け、米国などの駐日大使らは、性的少数者の差別反対と権利擁護を盛り込んだ法整備を日本政府に促してきた。世論調査によると、日本では同性婚が大多数に支持
旧満州のハルビン市近郊に拠点を構えていた関東軍防疫給水部本部、通称「731部隊」は、人体実験の結果をもとに生物兵器の開発をしていたことで知られる。最近、中国の考古学研究チームが、黒竜江省に残された同部隊の地下研究施設についての報告書を発表。その非人道的な実験の一端を明らかにしている。 中国の黒竜江省文化財・考古学研究所のチームは、第二次世界大戦中、旧日本軍の「関東軍防疫給水部本部」、通称「731部隊」が生物兵器の開発のために恐ろしい人体実験をおこなっていた地下研究施設を発見した。 施設が見つかったのは、黒龍江省安達市の近郊だ。 長大なトンネルと複数の小部屋 2023年5月、中国の考古学誌「ノーザン・カルチュラル・レリックス」に、この地下研究施設の調査報告書が掲載された。同報告書は、この施設の発見によって、戦争犯罪の新たな証拠が見つかる可能性があると述べている。 「報告書には、いまも残る73
『先生の白い嘘』『おんなのいえ』『サターンリターン』などの作品で知られる、漫画家の鳥飼茜。彼女の作品のフランス語版も出版され、フランスでも人気を博している。フランスを訪問した鳥飼から、仏紙「ル・モンド」が話を聞いた。 異色の漫画家 フランスの書店のマンガ売り場において、鳥飼茜の作品は異彩を放っている。フランス人が最初に読んだ彼女の作品は『先生の白い嘘』だった。2020年1月、初めてフランス語版が出版された鳥飼の作品だ。 ⏳ pic.twitter.com/l5PYwY2Toj — Tsundoku Librairie ???? (@Tsundoku_Lib) January 10, 2023 フランス語に翻訳・出版された鳥飼茜の作品。左は『サターン・リターン』、右は『先生の白い嘘』 この作品は、ミソジニーと性暴力を正面から取り上げる。若い教師である主人公の原美鈴は、レイプされたことがある。
ヘレナ・リーは、男性に対してことのほか寛大な気持ちになる日──たとえば、通りでハンサムな男性を見かけたとき──には、嫌悪感を脇に置き、「目の保養」として彼らを見ることもある。 ただし、いまのところはそれが限界だ。「男たちの頭の中身なんて、知りたくもありません」とリーは言う。たいていの場合、男性とはみじんも関わりたくないのだ。 「男性を信頼しようと心がけてはいます。『男を皆殺しにしろ』なんて思わずにね」と彼女は言う。「でもごめんなさい、私はほんの少しそっち側なんです。つまり、極端な側の」 女性たちが社会に叩きつける「4つのNo」 リーは父親から虐待を受けていたが、父親は彼女が6歳のときに家を出ていき、以来ずっと母親と祖母と暮らしている。小さな家母長制の家庭が自分にはしっくりくる、と彼女は言う。 髪型はボブで、私と会った日は黒いデニムのボタンダウンシャツとベージュのトレンチコートを着ていた。大
フランスでは、2021年に売れたコミックの半数以上を日本のマンガが占めていたという。どのようにして、日本のポップカルチャーはフランスで確固たる地位を築くにいたったのか。 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは、ヨーロッパで最初の「オタク」の一人だったといえるかもしれない。現代のコレクターが珍しいマンガを集めるように、19世紀のジャポニズム・ブームが最高潮を迎えた頃、彼は浮世絵の木版刷を熱心に求めた。日本美術は、その遠近法の平板化から大胆な輪郭線にいたるまで、ゴッホの作品に深く影響を与えている。 自身が抱いていた東アジアに対する幻想を追い求めて、彼は南仏に赴いた(自作「星月夜」のインスピレーションになったと考えられている)。葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を見たゴッホは、すぐに弟のテオに宛てた手紙でこう激賞している。 「波は鉤爪のようで、舟はそのなかに囚われている。そう感じられるのだ」 ディズニーとは対照
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